資料シリーズ No.62
最低賃金制度に関する研究 ―低賃金労働者の状況―

平成 21年 11月11日

概要

近年、最低賃金制度に関する議論が高まっている中で、最低賃金近辺の賃金の張り付き状況や低賃金労働者の属性について詳細な実態を把握した分析結果は多くありません。

本資料シリーズは、厚生労働省労働基準局より要請を受けた課題研究「最低賃金制度に関する研究」の結果のうち、地域別最低賃金未満・付近労働者(以下「低賃金労働者」という。)について「賃金構造基本統計調査」の個票を用いて平成19年の状況分析したものです。この結果、下記のような知見が明らかになりました。注)

(1)最低賃金近辺の賃金の張り付き状況

都道府県別には、一般労働者は、基本的に、地域別最低賃金額の近辺に労働者が張り付いている状況は確認できない。パートタイム労働者は、北海道、青森、秋田、和歌山、山口、福岡、大分、宮崎、沖縄等は、地域別最低賃金額の近辺に多くの労働者が密集しているといえ、地域別最低賃金が賃金の下支え効果を一定程度果たしていると考えられる。一方、茨城、群馬、埼玉、東京、富山、山梨、長野、香川等では、地域別最低賃金額の近辺に多くの労働者が密集しているとはいえず、地域別最低賃金が賃金の下支え効果を十分に果たしているとはいえないと考えられる。目安のランク区分でいえば、総じてDランクの東北、九州、Cランクの一部の地域で、地域別最低賃金が賃金の下支え効果を一定程度果たしていると考えられる一方、Aランク、Bランクの地域では、地域別最低賃金が賃金の下支え効果を十分に果たしているとはいえないと考えられる。

(2)低賃金労働者の属性

労働者の属性別の集計では、低賃金労働者の割合は、年齢別には若年及び高年齢者、性別には女性、就業形態別にはパートタイム労働者、勤続年数別には勤続年数の短い者(女性は長期勤続者も)、学歴別には低学歴者(特に中卒)、企業規模別には小規模企業で高い。産業別には、大分類では、飲食店,宿泊業、卸売・小売業、女性の製造業、中分類では、衣服・その他の繊維製品製造業、飲食料品小売業、その他の小売業、洗濯・理容・美容・浴場業、一般飲食店、遊興飲食店、宗教等で低賃金労働者の割合が高い。

さらに、計量分析により地域別最低賃金未満の可能性が高い者の属性をみると、上記の集計結果とほぼ同様の傾向となったが、産業大分類別では、他の要因をコントロールした純粋の産業効果は運輸業、金融・保険業等で低賃金労働者となる可能性が高い結果となった。

  1. 注)

本資料シリーズは、平成15年の地域別最低賃金額近辺の労働者の状況を分析した、労働政策研究報告書No.44『日本における最低賃金の経済分析』(2005年)の第3章「地域別最低賃金に関する分析」の結果を踏まえ、より新しいデータにより、低賃金労働者の実態について分析を行った。そのため、手法等は『日本における最低賃金の経済分析』を踏襲している(ただし、今般の集計対象は民営計等であり、『日本における最低賃金の経済分析』(集計対象は民公営計等)とは若干異なっている。)。

なお、課題研究「最低賃金制度に関する研究」の本報告書掲載分以外の研究成果についても別途報告書としてとりまとめ、公表する予定である。

本文

執筆者

藤井 宏一
労働政策研究・研修機構(JILPT)統括研究員

研究期間 

平成19~20年度

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研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ
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