調査シリーズNo.268
「社会保険の適用拡大への対応状況等に関する調査」(企業郵送調査)
及び「働き方に関するアンケート調査」(労働者Web調査)結果
概要
研究の目的
パート・アルバイト等の短時間労働者に対する社会保険(厚生年金・健康保険)の適用を巡っては、① 週の所定労働時間が20時間以上、② 月額賃金が8.8万円以上、③ 雇用見込み期間が2ヶ月超のすべての要件を満たす場合(学生除く)に、常用雇用者の人数規模が501人以上の企業については2016年10月~、101人以上の企業は2022年10月~、51人以上の企業は2024年10月~、加入対象が拡大されてきた経緯がある。
また、人手不足への対応が急務となる中、短時間労働者がいわゆる「年収(106・130万円)の壁」を意識せずに働くことができる環境作りに向けて、2023年10月~「年収の壁・支援強化パッケージ」も実施された。こうした中、本調査は厚生労働省年金局年金課からの研究要請に基づき、適用拡大に対する企業や短時間労働者の対応状況・意向等について把握したものである。
研究の方法
(1)「社会保険の適用拡大への対応状況等に関する調査」(企業郵送調査)
16産業(農林漁業,公務を除く)における、全国の5人以上規模の企業2万社(民間信用調査機関所有の企業データベースから、産業・規模別に層化無作為抽出)を対象に、調査票を配布・回収した(郵送法)。実査期間は2024年11月14日~2025年1月7日で、有効回答数は9,067社(有効回答率45.3%)。
(2)「働き方に関するアンケート調査」(労働者Web調査)
インターネット調査会社の登録モニターを対象に、国内に居住する18~69歳で学生を除く、勤め先の通常労働者(いわゆる正社員)より所定労働時間の短い短時間労働者 (パートタイマー・アルバイト、契約社員・嘱託、派遣労働者)1万人の回答を、性別・年齢層別に層化割付回収した。実査期間は2024年11月26日~12月7日で、有効回答数は10,000人。
主な事実発見
- 2024年10月より適用拡大対象となった常用雇用者51~100人の企業で、要件を満たす短時間労働者(対象者)が「いる」場合(n=667社)に、新たに厚生年金・健康保険が適用されるのに伴い、対象者と概ねどのような方針で調整を行ったか尋ねると、「適用する計」が65.1%に対し、「中立(短時間労働者の意向にまかせる)」が30.6%等となった(図表1)。こうした結果を前回の調査結果と比較すると、2022年度調査で「適用する(意向)計」は約4割にとどまり、「未定・分からない」や無回答が約3割あったのに対し、2024年度調査では「適用する計」が約2/3と顕著に増加している。
- また、実際に短時間労働者(対象者)の加入があった場合(667社中、89.7%に相当するn=598社)に、厚生年金・健康保険の適用を推進した理由を尋ねると(複数回答)、「法律改正で決まったことだから(ありのまま、法令を遵守するため)」(60.5%)が最多となったが、次いで「短時間労働者自身が、希望した(している)から」(43.3%)、「短時間労働者の待遇を改善し、定着を図りたいから」(26.6%)、「短時間労働者により長い労働時間、働いてもらいたいから」(24.4%)、「短時間労働者の必要人数を、確保したいから(人手不足だから、求人の優位性を高めたいから)」(23.4%)等があがった。
図表1 常用51~100人企業等への適用拡大に伴う調整方針(上)と厚生年金・健康保険の適用を推進した理由(下)

- 全有効回答労働者のうち、常用雇用者51~100人企業に勤務する短時間労働者(適用拡大前からの厚生年金・健康保険適用者を除くn=322人)を対象に、2024年10月の適用拡大に伴い、自身の働き方(所定労働時間の長さ)や社会保険の適用状況に変化があったか尋ねると、「厚生年金・健康保険は適用されておらず、今後も働き方を変える予定はない」が41.0%となったが、「厚生年金・健康保険が適用されるよう、かつ手取り収入が増える(維持できる)よう、所定労働時間を延長した(してもらった)」が3.4%、「所定労働時間はそのまま、厚生年金・健康保険が適用された」が13.4%で合わせて16.8%に対し、「厚生年金・健康保険が適用されないよう、所定労働時間を短縮した(してもらった)」は10.9%で、「厚生年金・健康保険は適用されておらず、働き方にも変化はないが、今後については検討している」が29.8%となった(図表2)。なお、今後の変更意向についても合算集計すると、「厚生年金・健康保険が適用されるよう、かつ手取り収入が増える(維持できる)よう、所定労働時間を延長した(してもらった)/したい」が11.8%、「所定労働時間はそのまま、厚生年金・健康保険が適用された/されたい」が16.8%で合わせて28.6%に対し、「厚生年金・健康保険が適用されないよう、所定労働時間を短縮した(してもらった)/したい」が17.7%等となった。
図表2 常用51~100人企業に勤務する短時間労働者の適用拡大への対応状況

- 短時間労働者を「雇用している」企業(n=6,062社)に、2023年10月より実施されている「年収の壁・支援強化パッケージ」のうち、いわゆる「106万円の壁」として、短時間労働者の所定労働時間の延長や昇給(賃上げ)、手当支給を通じて新たに厚生年金・健康保険を適用した場合に「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」が支給される可能性があることを知っているか尋ねると、「既に、活用している」が3.3%、「知っている、今後、活用予定」が5.2%に対し、「知っているが、活用予定なし」が41.2%でもっとも多く、「知らないが、今後、活用を検討したい」が29.4%、「知らないし、今後も活用予定なし」が18.5%となった。「知っているが、活用予定なし」あるいは「知らないし、今後も活用予定なし」と回答した場合(n=3,621社)に、活用しない理由についても尋ねると(複数回答)、「対象となる短時間労働者が、いないから」(46.7%)がもっとも多く、これに「短時間労働者自身が、扶養の範囲内で働くことを希望するから」(35.1%)、「短時間労働者自身が、労働時間の延長を希望しないから」(33.6%)等が続いた。
- こうした中、全有効回答労働者のうち現在、就業調整している短時間労働者(n=3,745人)を対象に、仮に年収や労働時間によって就業調整を行う必要がなくなったら、現状以上に働くことを希望するかについて、育児や介護、家事負担、健康上の理由等、実際により長い労働時間、働くことが可能かどうかの実現可否も含めて尋ねると、総じて働くことを希望する割合は計64.7%となったものの、「働くことを希望するが、実際に働けるかどうかはわからない」(27.0%)との回答も多く、「働くことを希望し、実際にもっと働ける」は28.3%となった(図表3)。また、「働くことを希望しないが、働こうと思えば、実際にはもっと働ける」は20.4%で、合わせて希望の有無にかかわらず、実際にもっと働ける割合は計48.7%となった。
図表3 就業調整の必要がなくなった場合の短時間労働者の就業希望と実現可否

政策への貢献
- 衆議院 第219回国会・内閣衆質第191号答弁書「いわゆる年収の壁に関する質問主意書」令和 7年12月12日
で引用 - 「社会保険適用拡大特設サイト
」及びパンフレット「社会保険適用拡大のこんなとき!どうする?手引き(2026年4月時点版)
」
で引用等
本文
分割版
研究の区分
情報収集
研究期間
令和6~7年度
担当者
- 長山 直樹
- 労働政策研究・研修機構 調査部(統計解析担当)部長
- 渡邊 木綿子
- 労働政策研究・研修機構 調査部(統計解析担当)次長
データ・アーカイブ
本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.232)。
関連の研究成果
お問合せ先
- 内容について
- 研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム



