調査シリーズNo.266
技能実習制度の運用等に関する実態調査
(監理団体、実習実施者、実習生)
概要
研究の目的
技能実習制度の見直し検討に資するため、技能実習制度を運用する監理団体、実習実施者における監理や実習支援の実態とともに、技能実習生の実習実態の把握を目的としてアンケート調査を実施した。本調査は、厚生労働省人材開発統括官付海外人材育成担当参事官室の要請に基づく要請研究である。
研究の方法
- 調査方法:
- 回答サイトURLを郵送、WEB上で回答を依頼
- 調査対象:
- ①技能実習監理団体全数3,421団体(未達205件除く)
②実習実施者全数約6万社から5,000社を無作為抽出
③対象実習実施者の技能実習生各5名(配付ベースで25,000人) - 調査期間:
- ①2023年8月7日~9月7日
②2023年9月19日~10月11日
③2023年9月19日~10月11日 - 有効回収数/有効回収率:
- ①有効回収数1,095件、有効回収率32.0%
②有効回収数1,028件、有効回収率20.6%
③有効回収数2,230件、有効回収率8.9%
主な事実発見
- 監理団体調査
- 1つの監理団体が実習監理を行っている実習実施者数 は、15社未満が57.0%と過半数。5社未満の割合が25.3%と1/4を占めている。一方、50社以上も1割強(12.8%)。
- 受け入れている技能実習生の人数をみると、50人未満で49.8%と約半分を占める一方、150人以上も19.7%と約2割。
- 監理団体の形態では、「事業協同組合等の中小企業団体」が88.3%と大勢を占める。
- 受け入れている技能実習生が実習を行っている職種分野(複数回答)では、溶接や塗装などの「その他」分野、「建設関係」分野、「機械・金属関係」分野の割合が、それぞれ57.5%、51.6%、45.6%と高い。
- 常勤職員ひとり当たりの実習実施者の社数を計算すると、4社未満で51.1%と過半数を占め、7社未満で8割(81.2%)を超える(図表1)。
- 常勤職員ひとり当たりの実習生の人数では、20人未満で58.7%と過半数、30人未満で8割強(80.7%)を占める。
- 母国語相談の対応頻度については、「毎日」の割合が66.8%とトップ、次いで 「4~5日/週」(15.2%)、 「2~3日/週」(9.4 %)、「1日/週」(8.6 %)の順。
- 転籍希望の相談については(過去1年以内)、「受けたことはない」(55.2%)が 「受けたことがある」(44.8%)を若干上回っている。
- 転籍相談を受けた場合の転籍支援の実施については、「実施したことがある」(68.0%)が 「実施したことはない」(32.0%)を大きく上回っている。
図表1 常勤職員ひとり当たり実習実施者数(n=1091,単位=%)

- 実習実施者(実習を実施する企業)
- 総職員数(非正規従業員含む)は、「10人以上~30人未満」の割合が25.8%ともっとも高く、次いで「50人以上~100人未満」(17.6%)、「30人以上~50人未満」(14.7%)などの順。100人未満が6割強(64.9%)を占める。
- 技能実習生の出身国(複数回答)を見ると、ベトナムから受け入れている実習実施者割合が62.1%と過半数を占め、次いで「インドネシア」(22.0%)、「フィリピン」(14.8%)、「中国」(14.1%)など。
- 実習生を受け入れている職種分野(複数回答)をみると、「建設関係」の割合が29.3%ともっとも高く、次いで「その他」(19.9%)、「機械・金属関係」(15.9%)、「農業関係」(15.7%)、「繊維・衣服関係」(10.4%)、「食品製造関係」(9.5%)など。
- 日本語能力に起因して困った事例があったかどうか尋ねたところ(複数回答)、「特に問題は発生していない」との回答割合が44.3%ともっとも高い一方、「指示が理解されず、作業中に危険もしくは間違いが生じるおそれがあった」が42.2%(図表2)。
- 過去1年間で、実習期間中に途中で離職した実習生の人数を尋ねたところ、「0人」(=過去1年間に離職者はいなかった)が64.2%と過半数を占めた。「1人~2人」が27.2%、「3人~4人」が5.1%、「5人~6人」が1.6%など。
- 離職理由を尋ねたところ(複数回答)、「本人や家族等の私的事情で離職」をあげた割合が66.9%と圧倒的に高い。何らかのトラブルの「実習生や他の日本人労働者間のトラブルで離職」「実習先の役職員等の労使間トラブルで離職」をあげたのは、それぞれ5.5%、1.2%とわずか。
- 実習生の賃金水準を設定する基準について尋ねたところ、「主に最低賃金を基準に設定」が62.6%と過半数を占め、次いで「実習生の能力や経験に応じて設定」が23.0%。「同業他社の賃金水準に設定」が10.9%となっている。
図表2 日本語能力に起因して困った事例(MA,単位=%)

- 実習生調査
- 実習生の年齢構成については、「25才以上~30才未満」の割合が34.9%とトップで、次いで「20才以上~25才未満」が30.5%となっており、20才代で7割弱を占めている。男女別の年齢構成に大きな違いはない。技能実習生の男女比を見ると、男性59.1%、女性40.9%と、男性の割合が女性を若干上回っている。
- 実習生の学歴については、「高校卒業」が59.3%と過半数。次いで、「短大・専門学校卒業」(16.9%)、「大学卒業」(13.3%)、「中学校卒業」(8.7%)などとなっている。
- 技能実習を始める前の日本語能力については、もっとも能力の低い「N5」が51.4%と過半を占め、能力の高い「N3」「N2」は合わせても約1割程度。一方、現在の日本語能力について見ると、「N5」の割合が34.2%と高いことには変わりはないが、大幅に低下し、「N3」「N2」を合わせた割合が2割以上と大きく伸びて、実習前と後で、日本語能力が大きく向上している様子が見て取れる。
- 日本語ができないことで困ったことについて尋ねたところ(複数回答)、約4割(40.3%)が「特に問題はない」とする一方、「指示がわからないので、作業中に危険なことや、間違いがありそうだった」割合が33.5%、続いて「日常の生活で困ったことがあった」(19.4%)、「役所で手続きに困ったことがあった」(18.8%)など。
- 技能実習を辞めたいと思ったことはあるかどうか尋ねたところ、「辞めたいと思ったことはない」割合が84.8%と大多数を占め、「辞めたいと思ったことがある」は15.2%。
- 実習を「辞めたいと思ったことがある」人に、その理由を尋ねたところ(複数回答)、「働くことに比べて給料が安いと思うから」をあげる割合が45.9%とほぼ半数を占め、次いで「仕事がきついから」(28.4%)、「国の家族に会いたくなったから」(24.6%)、「職場の人間関係が悪いから」(18.3%)、「他の職場の友人の方が給料が高いから」(17.8%)など。これを、1つの理由に絞っても、トップは「働くことに比べて給料が安いと思うから」の34.3%。これに、「仕事がきついから」「国の家族に会いたくなったから」がともに15.4%で続く(図表3)。
- 今の手取り賃金月額(残業代を含み、税・社会保険料や寮費を引いたもの)を尋ねたところ、「10万円以上~15万円未満」の割合が46.2%と約半数を占め、「15万円以上~20万円未満」(36.8%)を合わせると10万円台が83.0%と8割を超えている。平均値は14万8,615円で、中央値は15万円となっている。
- 1週間の残業を含めた実労働時間については、「45時間以上~50時間未満」の割合が35.1%ともっとも高く、次いで「40時間以上~45時間未満」(32.8%)、「50時間以上~55時間未満」(17.8%)などの順。40時間台が約7割(67.9%)を占めている一方、50時間以上の割合も24.7%と低くない。平均値は45.68時間、中央値は45時間となっている。
- 技能実習の内容についての要望を尋ねたところ(複数回答)、「もっと残業できるようにしてほしい」「賃金を上げてほしい」とする割合がそれぞれ60.2%、51.5%と、他の項目を大きく引き離して2トップ。どちらも、賃金アップにつながる項目だが、労働時間が増えても賃金アップを指向する「もっと残業できるようにしてほしい」が6割を占めるのが特徴的。
- 1週間の実労働時間と賃金に対する満足度の関係を見ると、収入増につながる長時間労働時間が、賃金に対する満足度に単純にリンクしていないことが特徴的。週所定労働時間を一般的な40時間と仮定すると、週残業時間5時間~15時間に相当する週実労働時間「45時間以上~50時間未満」「50時間以上~55時間未満」であるとする実習生の賃金満足度(「良いと思う」割合)は、それぞれ63.6%、63.9%と、他の労働時間区分と比べて高い。これが、週実労働時間「55時間以上~60時間未満」「60時間以上~65時間未満」(つまり、週残業時間15時間以上)では、満足度がそれぞれ61.6%、56.1%と低下傾向を示している。
図表3 技能実習を辞めたいと思った理由(MA,SA,単位=%)
本文
分割版
研究の区分
情報収集
研究期間
令和5~7年度
調査担当者
- 郡司 正人
- 労働政策研究・研修機構 リサーチフェロー
- 奥田 栄二
- 労働政策研究・研修機構 調査部部長
お問合せ先
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