調査シリーズNo.217
人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(労働者調査)
- 記者発表『「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」(企業調査、労働者調査)結果』(PDF:1.5MB)(2021年2月5日)
概要
研究の目的
民間企業における人材育成と能力開発について、取り組みの現状と課題の把握を目的として、アンケート調査を実施した。厚生労働省が実施する『能力開発基本調査』では調査対象となっていない30人未満の小企業に勤務する労働者も対象に含め、中小零細企業で働く労働者の状況についても把握するものとした。なお、本調査は厚生労働省人材開発統括官からの要請を受けて行った。
研究の方法
インターネット調査
民間調査会社が保有する登録モニターのうち、以下の条件に合致する者から、10,000人分の回答を回収した。
- 性別:男女
- 年齢:18歳~65歳
- 居住地:全国(国内)
- 雇用形態:正社員および直接雇用の非正社員。ただし、直接雇用の非正社員は、そのうち契約社員、嘱託、パートタイマー・アルバイトのみ
- 勤務先:次の業種に該当する勤務先
「建設業」「製造業」「電気・ガス・熱供給・水道業」「情報通信業」「運輸業,郵便業」「卸売業,小売業」「金融業,保険業」「不動産業,物品賃貸業」「学術研究,専門・技術サービス業」「宿泊業,飲食サービス業」「生活関連サービス業,娯楽業」(その他の生活関連サービス業のうち家事サービス業を除く)「教育,学習支援業」「医療,福祉」「複合サービス事業」「サービス業(他に分類されないもの。外国公務を除く)」
- 勤務する会社の規模:従業員5人以上
回収にあたっては、2016年経済センサス活動調査に基づき、対象業種別、企業規模別(常用雇用者ベース)の常用雇用者数の構成比を算出した(対象業種×常用雇用者規模のセルを作成し、各セルの構成比を算出)。この構成比を10,000人にあてはめてセルごとの回収数を算出し、すべてのセルの回収数を満たすまで回収を継続した。
なお、常用雇用者規模のカテゴリーは、「9人以下」「10人以上30人未満」「30人以上100人未満」「100人以上300人未満」「300人以上」の5区分とした。
主な事実発見
- 2019年度に、会社の業務命令に基づき、通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練・研修(=OFF-JT)を受講したかを尋ねた。13.6%が「受講した」と回答し、86.4%が「受講していない」と回答している。
- 規模別にみると、規模の大きい企業に勤める者ほどOFF-JTを受講しており、「300人以上」では17.2%が受講している(図表1)。
- 仕事に関わる自己啓発(自発的に行う教育訓練)を2019年度に行ったかどうかを尋ねた。16.7%の人が自己啓発を「行った」と回答し、「行わなかった」は83.3%となっている。
- 規模別にみると、規模の大きい企業に勤務する者ほど、自己啓発を行った割合が高くなっており、「300人以上」では約2割(21.4%)が自己啓発を実施している(図表2)。
- 新型コロナウイルス感染症の拡大が、自身のリモートワークの活用に与えた影響を尋ねた。「進んでいない/そもそも導入されていない」とする割合が64.9%で最も高く、「今回やや進んだ」が17.0%、「今回大きく進んだ」が16.0%、「以前から進んでいる」が2.1%となっている。
- 規模別にみると、「以前から進んでいる」は規模による差がほとんどないが、「今回大きく進んだ」と「今回やや進んだ」は、規模による差が顕著で、規模の大きい企業で働く人ほど、コロナ禍を契機として、リモートワークの活用が進んでいる(図表3)。
政策的インプリケーション
小規模企業で働く労働者は、OFF-JTの受講と自己啓発のいずれも低調な状況にある。彼らも含めた行政による人材育成・能力開発の支援が重要となる。
政策への貢献
人材開発行政にかかる政策立案のための基礎資料として活用される。
本文
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研究の区分
情報収集
研究期間
令和2年度~3年度
研究担当者
- 郡司 正人
- 労働政策研究・研修機構 調査部長
- 藤本 真
- 労働政策研究・研修機構 人材育成部門 主任研究員
- 荒川 創太
- 労働政策研究・研修機構 調査部 主任調査員補佐
- 岩田 敏英
- 労働政策研究・研修機構 調査部 調査員
*肩書きは調査実施時点。
データ・アーカイブ
本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.141)。