調査シリーズNo.207-2
「パートタイム」や「有期雇用」の労働者の活用状況等に関する調査結果 労働者調査(「働き方等に関する調査」)編
概要
研究の目的
「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)」が2015年4月に施行され、2020年4月には「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(同一労働同一賃金ガイドライン)」を含めた「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)」等が施行された。パートタイム・有期雇用労働法の施行を前に、企業の「パートタイム」「有期雇用」の労働者に対する雇用管理の状況がどのようになっているのか、また、今後の企業がどのように対応しようとしているのか等の動向を明らかにするとともに、そこで勤務する「パートタイム」「有期雇用」の労働者の就労状況等を把握するため、当該労働者を対象とするアンケート調査を行った 。
研究の方法
調査対象は、日本標準産業分類における〔鉱業,採石業,砂利採取業〕〔建設業〕〔製造業〕〔電気・ガス・熱供給・水道業〕〔情報通信業〕〔運輸業,郵便業〕〔卸売業,小売業〕〔金融業,保険業〕〔不動産業,物品賃貸業〕〔学術研究,専門・技術サービス業〕〔宿泊業,飲食サービス業〕〔生活関連サービス業,娯楽業〕〔教育,学習支援業〕〔医療,福祉〕〔複合サービス事業〕〔サービス業(他に分類されないもの)〕に属する常用雇用者 10人以上の企業(2万社)で働く「パートタイム」や「有期雇用」の労働者約4万3,600人。
民間信用調査機関が所有する名簿から、経済センサスの従業員10人以上の企業の分布に基づき産業・規模別に層化無作為抽出し、労働者向けの本調査票を企業票と同梱して郵送。企業に「直接雇用されているパート・有期雇用労働者」を対象に配布することを依頼した。
なお、労働者票の配布にあたっては、社員構成に照らしてできるだけ偏りが出ないような配布を依頼した。返送は会社経由ではなく、回答者から直接、記入済みの調査票を受ける形をとった。
主な事実発見
- 業務の内容等が同じ正社員との賃金水準比較
勤務先に業務内容や責任の程度が同じ正社員がいると回答した「パートタイム」「有期雇用」の労働者(n=1,967)に対し、業務の内容等が同じ正社員と比べて、自分の賃金水準をどう思うか尋ねたところ、賃金水準が自分よりも高かったり、低くても納得している労働者が4割弱を占めたが、「正社員より賃金水準が低く、納得していない」とする労働者が24.6%と4人に一人の割合にのぼった(図表1)。
「正社員より賃金水準が低く、納得していない」との回答割合は、有期雇用でフルタイムの労働者や、正社員と仕事の異同状況が同じ人でより高くなっている。
(単位:%)
- 業務の内容等が同じ正社員にのみ支給・適用されていたり、支給・適用基準が異なっていて納得できない制度や待遇
勤務先に業務内容や責任の程度が同じ正社員がいると回答した労働者(n=1,967)に対し、業務の内容等が同じ正社員にのみ支給・適用されていたり、支給・適用基準が異なっていたりして納得できない制度や待遇があるかどうか尋ねたところ(複数回答)、「特に無い」を除いてみれば最も回答割合が高かったのは「賞与」(37.0%)で、次いで「定期的な昇給」(26.6%)、「退職金」(23.3%)などの順で高い(図表2)。有期雇用でフルタイムの労働者では、「賞与」の回答割合は4割以上(45.2%)におよんでいる。
(単位:%)
- 不合理な待遇差があると感じたことがあるか
パートタイム・有期雇用労働法では、正社員・正職員と「パートタイム」や「有期雇用」の労働者の間での、職務や人材活用の仕組み、その他の事情に照らして不合理な待遇差等が禁止されるが(第8条)、現在の勤務先に限らずこれまで働いてきたなかでそうした不合理な待遇差があると感じたことがあるか尋ねたところ、「ある」と回答した労働者は約2割(21.3%)で、同割合は、有期雇用でフルタイムの労働者や、正社員と仕事の異同状況が同じ人でより高くなっている。(図表3)。
(単位:%)
- 企業に待遇差の理由等の説明を求めたいと思うか
不合理な待遇差があると感じたことが「ある」と回答した人(n=1,186)に、同法14条第2項に基づき、企業に対して待遇差の理由等の説明を求めることができるようになることを示したうえで、企業に待遇差の理由等の説明を求めたいと思うか尋ねたところ、「説明を求めたい」が37.2%と4割弱にのぼった(「必要ない」が25.2%、「分からない・考えたことが無い」が36.7%)。
政策的インプリケーション
有期雇用であってもフルタイムで働く労働者や、仕事の内容が正社員に近い労働者はより、賃金水準や賞与・退職金等の適用を受けていないことや支給内容に、納得できないとする割合が高いことから、引き続き改正法等の趣旨を企業に周知し、合理的でない待遇格差があればそれを是正する取り組みを促していくことが肝要である。
政策への貢献
- 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(「パート・有期雇用労働法」)に基づき策定された「短時間・有期雇用労働者対策基本方針」(令和2年3月)に調査結果が活用・引用された。また、今後のパートタイム・有期雇用にかかる施策立案のための基礎資料として活用される。
- 内閣府「令和2年度年次経済財政白書―コロナ危機:日本経済変革のラストチャンス―」(令和2年11月6日)に引用
本文
全文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。
- 表紙・まえがき・調査実施担当者・本調査での用語の定義・目次(PDF:535KB)
- 第1部 調査の概要
第2部 調査の概要 (PDF:3.3MB) - 付属資料・付属統計表①・付属統計表②(PDF:5.6MB)
研究の区分
情報収集
研究期間
令和元年度~令和2年度
調査実施担当者
- 荒川 創太
- 労働政策研究・研修機構 調査部主任調査員補佐
- 渡邊 木綿子
- 労働政策研究・研修機構 雇用構造と政策部門付リサーチャー
データ・アーカイブ
本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.137)。