調査シリーズNo.207-1
「パートタイム」や「有期雇用」の労働者の活用状況等に関する調査結果 企業調査編

2021年1月29日

概要

研究の目的

「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)」が2015年4月に施行され、2020年4月には「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(同一労働同一賃金ガイドライン)」を含めた「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)」等が施行された。パートタイム・有期雇用労働法の施行を前に、企業の「パートタイム」「有期雇用」の労働者に対する雇用管理の状況がどのようになっているのか、また、今後の対応の動向を明らかにするため、アンケート調査を行った 。

研究の方法

企業アンケート調査(郵送方式)。

日本標準産業分類における〔鉱業,採石業,砂利採取業〕〔建設業〕〔製造業〕〔電気・ガス・熱供給・水道業〕〔情報通信業〕〔運輸業,郵便業〕〔卸売業,小売業〕〔金融業,保険業〕〔不動産業,物品賃貸業〕〔学術研究,専門・技術サービス業〕〔宿泊業,飲食サービス業〕〔生活関連サービス業,娯楽業〕〔教育,学習支援業〕〔医療,福祉〕〔複合サービス事業〕〔サービス業(他に分類されないもの)〕に属する常用雇用者 10人以上の企業2万社を対象とし、民間信用調査機関が所有する名簿から、経済センサスの従業員10人以上の企業の分布に基づき産業・規模別に層化無作為抽出した。

主な事実発見

  1. 「パートタイム」や「有期雇用」の労働者と正社員・正職員の、職務や人材活用の仕組みの違い

    自社の【有期雇用でフルタイム】、【有期雇用でパートタイム】、【無期雇用でパートタイム】の労働者について、正社員・正職員と職務(業務の内容や責任の程度)が同じ者がいるかどうか尋ねたところ、「業務の内容も、責任の程度も同じ者がいる」との回答割合が、【有期雇用でフルタイム】については29.1%とほぼ3割にのぼっている(図表1)。

    図表1 正社員・正職員と職務(業務の内容や責任の程度)が同じ者がいるか

    (単位:%)

    図表1画像

  2. 「パートタイム」や「有期雇用」の労働者に支給・適用している制度や待遇

    自社の【有期雇用でフルタイム】、【有期雇用でパートタイム】、【無期雇用でパートタイム】の労働者に支給・適用している制度・待遇をあげてもらったところ(複数回答)、「賞与」をあげた企業の割合は【有期雇用でフルタイム】については58.9%と6割近くにのぼる一方、【有期雇用でパートタイム】では4割弱(38.7%)となっている。一方、「退職金」をあげた企業の割合は【有期雇用でフルタイム】でも1割台(14.8%)にとどまる(図表2)。

    図表2 「パートタイム」や「有期雇用」の労働者に支給・適用している制度・待遇(複数回答)賃金、賞与、退職金など(選択肢の一部)

    (単位:%)

    図表2画像

  3. 待遇差の理由等についてどの程度、説明できるか

    パートタイム・有期雇用労働法では、正社員・正職員と「パートタイム」や「有期雇用」の労働者の間で、職務や人材活用の仕組み、その他の事情に照らして不合理な待遇差等が禁止される(第8条、第9条)とともに、本人からの求めがあれば、待遇差の理由等も説明しなければならなくなる(第14条第2項)ことから、待遇差の理由等について、どの程度、説明できると思うか尋ねたところ、「大半の待遇差を、説明できると思う」との回答割合は、パートタイム・有期雇用労働法等について「内容まで知っている」と回答した企業では7割近く(69.3%)にのぼったものの、内容が分からないなどとした企業では、それよりも20ポイント以上低くなっている(図表3)。

    図表3 待遇差の理由等についてどの程度、説明できるか

    (単位:%)

    図表3画像

  4. ガイドライン案の提示以降での不合理な待遇差をなくす取り組み

    政府の働き方改革実現会議において、「同一労働同一賃金ガイドライン案」が提示されて以降(2016年12月20日以降)、これまでに正社員・正職員とそれ以外の労働者との間の不合理な待遇差を無くすための取り組みを行ったか尋ねたところ、「取り組みを行った」は33.2%で、今後については30.2%が「取り組みを行う予定がある」とした。

    これまでにどのような取り組みを行ったか、また、今後予定する取り組みをそれぞれ尋ねたところ、これまでの取り組みでは「基本的な賃金の水準の引上げ」(54.9%)が最も回答割合が高く(図表4)、今後については「退職金の導入や、退職金の算定方法等の見直し」を2割弱(19.6%)の企業が取り組む予定としている。

    図表4 正社員・正職員とそれ以外の労働者との間の不合理な待遇差を無くすためにこれまでに取り組んだ内容および今後取り組む予定の内容(ともに複数回答)

    (単位:%)

    図表4画像画像クリックで拡大表示

政策的インプリケーション

パートタイムや有期雇用で働く労働者のなかには、有期雇用でフルタイムなど、正社員と業務の内容や責任の程度が同じ人も少なくないが、賞与や退職金など適用割合がそれほど高くない制度や処遇もみられる。また、改正法等の認知度が低い企業では必要な待遇改善の取り組みが遅れている可能性もあることから、引き続き、改正法等の趣旨を企業に周知し、企業の取り組みを促していくことが肝要である。

政策への貢献

  • 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(「パート・有期雇用労働法」)に基づき策定された「短時間・有期雇用労働者対策基本方針」(令和2年3月)に調査結果が活用・引用された。また、今後のパートタイム・有期雇用にかかる施策立案のための基礎資料として活用される。
  • 内閣府「令和2年度年次経済財政白書―コロナ危機:日本経済変革のラストチャンス―」(令和2年11月6日)に引用

本文

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研究の区分

情報収集

研究期間

令和元年度~令和2年度

調査実施担当者

荒川 創太
労働政策研究・研修機構 調査部主任調査員補佐
渡邊 木綿子
労働政策研究・研修機構 雇用構造と政策部門付リサーチャー

関連の研究成果

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