調査シリーズNo.205
事業所における労働者の休養、清潔保持等に関する調査

2020年11月30日

概要

研究の目的

働き方改革法案の附帯決議において「事務所その他の作業場における労働者の休養、清潔保持等のため事業者が講ずるべき必要な措置について、働き方改革の実現には、職場環境の改善を図ることも重要であるとの観点を踏まえ、労働者のニーズを把握しつつ、関係省令等の必要な見直しを検討すること」とされており、事務所等における労働者の休養、清潔保持等についての実態及び労働者のニーズについて把握する必要がある。

本附帯決議を踏まえ、事業所における休養や清潔保持のための設備(照度、便所、休憩設備、更衣室、洗身設備、休養室等)の現状や労働者の満足度、改善要望等について、労働者を対象にWEBモニターアンケート調査を実施した。

研究の方法

  1. 調査方法:調査会社のモニター登録会員を対象としたインターネット調査。
  2. 調査対象:男女15歳以上の16大産業で働く正社員、契約社員、パート・アルバイト、派遣労働者。回収は「就業構造基本調査(2017年)」の「性」「年齢」「産業」(「農林漁業」「公務」「分類不能」除く)の分布に合わせた層化割付回収とし、合計7,000件を目標回収件数とした。
  3. 調査項目:事業所の照度、温度、便所、休憩設備、更衣室、洗身設備、休養室の現状、労働者の満足度、改善要望等。

主な事実発見

1.事務作業における照度

本調査では、調査対象全数(n=7,000)に対して、事務作業の有無を尋ねた。その結果、「行っている」が67.4%、「行っていない」が32.6%となり、全体の7割弱がなんらかの事務作業を「行っている」と回答した。

事務作業を「行っている」と回答した者(n=4,719)に対して、事務作業における照度を尋ねた結果、「十分である」(80.5%)と回答した割合が8割を占めた。一方、「十分でないと感じることもある」(17.4%)と「十分ではない」(2.0%)と合わせた「十分でない・計」は19.4%となり、事務作業を行っている者の2割程が照度不足を感じている結果となった。

事務作業の照度が十分でないと感じている者(「十分でない・計」)に、明るさ不足による事務作業面への悪影響を複数回答で尋ねた結果、「目や肩が疲れて小休止が必要」(51.1%)を挙げる割合が最も高く、次いで、「作業を間違えることがある」(21.6%)、「作業に時間がかかる」(19.4%)、「ルーペなどの補助器具が必要」(12.3%)の順となった。一方、「特に作業効率は変わらない」(26.5%)と回答した割合は2割程となった。

年齢別にみると、全体平均より5ポイント以上高い項目に着目すると、20代以下では、「目や肩が疲れて小休止が必要」(58.5%)、「作業を間違えることがある」(30.9%)、「作業に時間がかかる」(29.3%)と回答した割合が高くなっている。50代では、「ルーペなどの補助器具が必要」(21.2%)と回答した割合が高くなっている。一方、60代以上は、「特に作業効率は変わらない」(36.6%)と回答した割合が高くなった。 

2.トイレ

男女別トイレの整備状況を全数に尋ねた結果、「男女別」が78.4%、「男女共用」が21.6%となった。全体の2割程が勤務先のトイレが「男女共用」と回答している。

これを事業所規模別にみると、「男女共用」と回答した割合は、「29人以下」(39.5%)が4割程と高くなっている。男女共用トイレは小規模事業所に多いことがわかった。

事業所の便房(個室トイレ)の混雑状況を全数に尋ねた結果、「常に混雑している」(2.9%)と「混雑するときがある」(34.5%)を合わせた「混雑・計」は37.4%で、全体の4割弱が個室トイレに混雑を感じている結果となった。

便房の混雑感(「混雑・計」)を性別に見ると、顕著な男女差は見られなかったが、事業所規模別に見ると、おおむね規模が大きくなるほど、高くなる傾向が見られた。

一方、男性小便器の「混雑・計」は25.8%となった。事業所規模別に見ると、「混雑・計」の割合は、おおむね規模が大きくなるほど、高くなっている。

事業所にあるトイレの満足度を全数に尋ねた結果、「満足」が26.4%、「やや満足」が44.1%となり、「満足・計」は70.5%となった。一方、「やや不満」は22.2%、「不満」は7.4%となり、「不満・計」は29.6%となった。これを性別にみると、男性と比べて女性は、「不満・計」の割合が高くなっている(男性26.4%、女性33.2%)。

トイレの不満点を全数に複数回答で尋ねた結果、「トイレ内の個室(便房)が少ない」(18.4%)と回答した割合が最も高く、以下、「トイレが狭い」(17.2%)、「トイレの設置箇所が少ない」(15.1%)、「出入りが他人の目に触れる」(10.4%)、「不潔である」(9.9%)、「男女共用である」(8.8%)の順となっている。一方、「特に不満はない」と回答した割合は39.2%となる(図表1)

図表1:トイレの不満点(MA、単位=%)

図表1画像

※各項目で全体より5ポイント以上高い数値に網掛け。

※トイレ満足度の「満足・計」は、「満足」「やや満足」の合計。「不満・計」は、「やや不満」「不満」の合計。

これを性年齢別にみると、女性20代以下は「トイレ内の個室(便房)が少ない」(25.8%)、「トイレが狭い」(22.7%)などの回答割合が全体より5ポイント以上高くなっている。

一方、トイレが「男女共用」と回答した者(n=1,514)に対して、男女別トイレの必要性を尋ねた結果、「そう思う」が37.6%、「やや思う」が23.9%で、「思う・計」は61.5%となる。勤務先のトイレが「男女共用」と回答した者の6割超が、男女別トイレの設置を求めていることがわかった(図表2)

図表2 男女別トイレの必要性(SA、単位=%)

図表1画像

※事業所のトイレが男女共用と回答した者(n=1,514)を対象に集計。

これを性別にみると、男性と比べて女性のほうが、男女別トイレの必要性の「思う・計」の回答割合が高くなっている(男性56.8%、女性64.9%)。性年齢別にみると、「思う・計」の回答割合は、女性20代以下、女性30代で7割程と高くなっている(それぞれ72.1%、72.3%)。

3.休憩室

調査対象全数に事業所における休憩室の有無を尋ねた結果、「ある」が59.9%、「ない」が40.1%となり、全体の約6割が勤務先に休憩室や休憩スペースが設置されていると回答している。

これを事業所規模別にみると、休憩室が「ある」と回答した割合は、おおむね規模が大きくなるほど、高くなっている。「1,000人以上」では、休憩室が「ある」の回答割合が7割超となっている(70.4%)。一方、休憩室が「ない」と回答した割合は、「29人以下」で高くなっている(50.1%)。小規模事業所では、休憩室の設置が進んでいないようだ。

休憩室が「ない」と回答した者(n=2,807)に対して、休憩室の必要性を尋ねた結果、「そう思う」が31.0%、「やや思う」が30.0%となり、「思う・計」が61.0%となった。休憩室が「ない」と回答した者の6割程が設置を希望している結果となった。

4.更衣室

調査対象全数に、更衣室の有無を尋ねた結果、「ある(男女別)」(53.8%)と「ある(男女共用)」(9.0%)を合わせた「ある・計」の回答割合が62.8%となり、全体の6割程が勤務先に更衣室が「ある」と回答している。

事業所形態別に見ると、更衣室の「ある・計」の割合は、「病院、医療・介護施設」(86.0%)、「工場、作業所(鉄道の駅や発電所、倉庫を含む)」(79.8%)、「研究所」(78.9%)など、着替えの必要性の高い事業所形態で高くなっている。一方、「ない」と回答した割合は、「事務所」(50.9%)、「営業所、出張所」(43.5%)で高くなっている。

事業所規模別にみると、おおむね規模が大きくなるほど、更衣室が整備されている割合(「ある・計」)が高くなっている。一方、小規模事業所では、更衣室の整備が進んでいないようで、「29人以下」では、更衣室が「ない」割合が半数超を占めている(52.4%)。

更衣室が「男女共用」と回答した者(n=631)に対して、男女別更衣室の必要性を尋ねた結果、「そう思う」が30.4%、「やや思う」が29.3%で、「思う・計」は59.7%となる。回答者の6割近くが男女別更衣室の必要性を感じている結果となった。

5.休養室

体調が悪い時に横になって休む「休養室」の有無を全数に尋ねた結果、「ある(男女別)」が13.0%、「ある(男女共用)」が16.7%、両者を合わせた「ある・計」は29.7%となり、全体の3割弱が勤務先に休養室が「ある」と回答している。

休養室は、常時50人以上または常時女性30人以上の労働者を使用する事業者に対して、その設置が求められている。事業所規模別にみると、休養室の「ある・計」の回答割合は、おおむね規模が大きくなるほど、高くなっている。「ある・計」の回答割合は、29人以下(19.3%)、50人以上(41.2%)、1,000人以上(49.9%)となった。

休養室が「男女共用」と回答した者(n=1,169)に、男女別休養室の必要性を尋ねた結果、「そう思う」が19.7%、「やや思う」が32.5%で、「思う・計」が52.2% となった。休養室が「男女共用」と回答した者の半数強が、男女別の設置を求めているようだ。性年齢別にみると、「思う・計」は、男女とも50代で高くなっている(男性59.3%、女性59.8%)。

政策的インプリケーション

小規模事業所では、男女別トイレや休憩室、更衣室などの整備が進んでいないことから、事業者に対する支援が必要と思われる。

政策への貢献

厚生労働省労働基準局安全衛生部が開催した第1回「事務所衛生基準のあり方に関する検討会」(令和2年8月25日)で調査結果(速報版)を報告。第2回目以降の検討会の議論で活用された。

本文

研究の区分

情報収集

研究期間

令和元年度~令和2年度

調査担当者

郡司 正人
調査部長
奥田 栄二
調査部 主任調査員
遠藤 彰
調査部 主任調査員補佐
田中 瑞穂
調査部 調査員

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.131)。

入手方法等

入手方法

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成果普及課 03(5903)6263

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