調査シリーズNo.150
妊娠等を理由とする不利益取扱い及びセクシュアルハラスメントに関する実態調査結果

平成28年 5月31日

概要

研究の目的

2014年10月の専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案に対する附帯決議において、「女性有期雇用労働者に対する妊娠、出産、育児休業取得等を理由とする雇止めの実態について、十分な調査」を行うこととされたこと等を受け、派遣労働者を含めた有期契約労働者注)の育児休業取得状況等の実態や、妊娠等を理由とする不利益取扱い等及びセクシュアルハラスメントについて、正社員等無期契約の労働者との比較において調査することにより、施策の方向性の検討に活用することを目的とした。

注)本調査では派遣労働者の実態を明らかにするため、「職業紹介・労働者派遣業」及び派遣労働者をオーバーサンプリングしている。企業調査は母集団に復元して集計しているため結果に偏りはないが、個人調査は回答をそのまま集計しているため、雇用形態計の値をみる際には注意が必要である。

研究の方法

企業及び従業員に対する郵送法による調査票調査と、雇用者及び雇用されて就業した経験のある無業者に対するウェブモニター調査。

<調査票調査の詳細>

調査票調査の対象は、民間信用調査会社所有の企業データベースを母集団とし、2009年経済センサス基礎調査の構成比に基づき、産業・規模別に層化無作為抽出した全国の従業員10人以上の民営企業6,500社、及び当該企業に雇用される25~44歳の女性労働者(規模に応じて1社当たり3票または5票を配布するよう依頼したため最大26,186人だが、対象年齢層の女性労働者がいない企業もあることから実際の配布数は不明。)。2015年9月14日~10月4日を調査期間と設定し、11月4日までに回収できた分を集計した。企業1,711社(26.3%)、労働者4,654人(26,186人に対し17.8%)から有効回答を得た。企業調査は母集団に復元して集計した。

<ウェブモニター調査の詳細>

ウェブモニター調査は、民間の調査会社にモニター登録している25~44歳の女性雇用労働者2,500人、及び雇用されて就業した経験がある25~44歳の女性無業者2,500人から回答を得た。調査期間は2015年9月18日~10月6日。

主な事実発見

  1. 就業規則等に明文化された育児休業制度がある企業では、ない企業に比べ出産後も働き続ける女性が多く、有期契約労働者について育児休業制度を取得できる者が明確化されている企業では、されていない企業に比べ、出産後も働き続ける有期契約労働者が多い。

    図表1 育児休業規定の明確化と出産後の継続就業状況(企業調査)

    図表1画像

    (注)

    1. 「要件を満たす者」とは、法律上の育児休業取得要件である「子の出生までに1年以上雇用され、子が1歳到達日を超えて引き続き雇用が見込まれ、子が2歳時点までに契約更新がないことが明らかでない」者をいう。
    2. 無回答を除く。
  2. 妊娠、出産、未就学児の育児を経験した勤務先において、妊娠等を理由とする不利益取扱い等の経験率は、正社員で22.3%。契約社員やパートタイマーでは正社員より低いが、派遣労働者では正社員より高い。妊娠等を理由とする不利益取扱い等は上司だけではなく同僚からも行われ、男性だけでなく女性からも行われている。

    図表2 雇用形態別妊娠等を理由とする不利益取扱い等経験率(個人調査)

    図表2

    (注)

    1. 最近2つまでの職場において、妊娠、出産、未就学児の育児をした者(雇用形態「無回答」を除く、n=4,505)に占める割合。
    2. 企業規模計には「覚えていない、わからない」、「官公庁」及び無回答を含む。派遣労働者の企業規模は派遣先企業の規模。また、派遣労働者の1~29人はサンプルサイズが38と小さいことに注意が必要。
    3. 雇用形態計には「わからない」を含む。
    4. 経験率は最も重大と考える事案を経験したときの雇用形態別経験者を、現在または退職時の雇用形態別妊娠、出産、未就学児の育児経験者数で除して求めている。
  3. 妊娠等を理由とする不利益取扱い等防止対策に取り組んでいる企業では、取り組んでいない企業よりも経験率が低くなるばかりでなく、出産後も働き続ける女性の割合が高くなる傾向がある。

    図表3 企業が取り組む対策別妊娠等を理由とする不利益取扱い等経験率(企業調査・個人調査)

    図表3画像

    (注)企業票と紐付けできない者及び、無回答を除く、n=1,606。

  4. セクシュアルハラスメントの経験率は正社員で34.7%と非正社員より高く、規模別には大規模ほど高い。態様としては「容姿や年齢、身体的特徴について話題にされた」が多く、行為者は妊娠等を理由とする不利益取扱い等に比べて女性から受ける割合は総じて低い。

    図表4 雇用形態、企業規模別セクシュアルハラスメント経験率(個人調査)

    図表4画像

    (注)

    1. 最近2つまでの職場についてのセクシュアルハラスメント経験について、無回答を除く、のべ回答者数はn=14,279。
    2. 企業規模計には規模1~9人、官公庁、規模不明を含む。
    3. 経験率は、最も重大と考える事案を経験したときの雇用形態別経験者を、現在または退職時の雇用形態別未経験者数との合計で除して求めている。
  5. セクシュアルハラスメント防止対策に取り組んでいる企業はおよそ6割であるが、規模100~999人では9割以上、1,000人以上では全ての企業が取り組んでいるのに対し、10~99人では半数強の企業しか取り組んでいない。

    図表5 セクシュアルハラスメント防止対策(企業調査)

    図表5画像

    (注)相談・苦情対応窓口の男女別配置状況以外は複数回答。無回答を除く。

政策的インプリケーション

出産後の継続就業率を高めるために、育児休業制度の明文化や、有期契約労働者について育児休業制度を取得できる者を明確化することが有効である。

妊娠等を理由とする不利益取扱い等は、上司だけではなく同僚からも行われていることから、事業主ばかりでなく上司・同僚からの行為を防止することが求められ、また、派遣労働者の経験率が高いことから、派遣先もまた事業主とみなして防止措置義務を適用することが適当と考えられる。

妊娠等を理由とする不利益取扱い等防止対策、セクシュアルハラスメント防止対策とも、規模の小さな企業における取組を推進していくことが必要である。

政策への貢献

労働政策審議会雇用均等分科会において検討資料とされた。

本文

研究の区分

緊急調査『働き方の改革・女性活躍推進に向けた企業調査』

研究期間

平成27年度

担当者

永田 有
労働政策研究・研修機構 統括研究員
眞崎 昭彦
みずほ総合研究所(株)上席主任研究員
酒井 計史
労働政策研究・研修機構 アシスタントフェロー

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.91)。

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