調査シリーズ No.112
メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査

平成25年11月29日

概要

研究の目的

作業関連疾患(脳・心臓疾患、精神疾患、腰痛等筋骨格系疾患、がんなど)が増加する一方、労働者が治療と就労の両立ができないために、療養後の職場復帰を断念する、あるいは、復帰後に就労を継続できず離職せざるを得ない状況に陥るケースが生じていると言われている。企業における労働者の治療(私傷病も含む)のための勤務条件・制度の導入状況、相談体制等の支援状況、労働者の職場復帰状況等を把握するため、本調査を実施した。

研究の方法

調査方法は、郵送による調査票の配布・回収。常用労働者50人以上を雇用している全国の民間企業20,000 社(農林漁業・公務除く)を対象に、産業・規模別に層化無作為抽出。調査実施時期は、2012 年11月16日から11月30日。有効回収数:5,904 件(有効回収率:29.5%)。

主な事実発見

  1. 通常の年次有給休暇以外で、連続して1ヵ月以上、従業員が私傷病時に利用できる休暇・休職・休業する制度(慣行を含む。以下「病気休職制度」とする)があるのは、91.9%。そのうち、就業規則等の規定状況は、「規定されている」が77.7%で、「規定されていない」は9.7%となっている。病気休職制度の非正社員への適用状況は、「非正社員には適用されない」が48.5%ともっとも高く、「すべての非正社員に適用される」が31.1%、「一部に適用されている者がいる」が14.5%となっている。
  2. 現在(調査時点)の病気休職制度を利用した休職者人数の平均値は0.74 人となっている。分布をみると、「0人」が63.2%と割合がもっとも高く、次いで「1人」が16.5%、「2人」が6.4%となっている。「1人以上計」(休職者がいる企業)は28.4%となっている。疾病別の内訳人数をみると、平均値は、「メンタルヘルス」(0.37人)がもっとも高く、次いで、「その他の身体疾患」(0.18人)、「がん」(0.09人)などとなっている。過去3年間でみると、病気休職制度の休職者人数(新規利用人数)は、平均値が2.88 人であり、休職者1人以上の割合(すなわち休職者がいる企業割合)は52.0%となっている。
  3. 継続就業のパターンでは、正社員の場合、「退職・計」(「休職期間中(もしくは復職直後)に退職している」「休職を経て復職後、しばらく勤務した後に退職している」「休職をせずに退職している」の合計)の割合は、「メンタルヘルス」が27.0%でもっとも高い。「休職をせずに退職している」割合は「難病」がもっとも高く、次いで「脳血管疾患」「B型肝炎もしくはC型肝炎」などとなっている。正社員と非正社員を比較すると、「休職をせずに退職している」割合は、いずれの疾病でも正社員に比べ非正社員のほうが高い(図表1)。
  4. 今後3年間程度でみた疾病への対策を経営・労務管理上の重要課題と考えるかについては、「重要」(「最重要課題」「どちらかといえば重要課題」の合計)とする割合が「メンタルヘルス」で72.2%ともっとも高くなっており、次いで「糖尿病・高血圧等の生活習慣病」「がん」「心疾患」などとなっている。メンタルヘルスや私傷病の治療と仕事を両立させるための課題でもっとも多かったのは、「休職者の復帰後の仕事の与え方、配置」で55.6%となっており、次いで、「代替要員の確保が困難」「再発防止」「休業期間中の給与の保障が困難」などとなっている(図表2)。

図表1 メンタルヘルスや私傷病に罹患した社員が出た場合の継続就業の状況のパターン(単位=%)

図表1表

※正社員は「当該疾病者を把握していないのでわからない」及び無回答を除き集計。非正社員は「非正社員がいない」「当該疾病を把握していないのでわからない」及び無回答を除き集計。「継続就業・計」は「休職を経て通院治療をしながら働き続けている」「休職を経て通院治療をせずに働き続けている」「休職をせずに通院治療等をしながら働き続けている」「長期の休職または休職、復職を繰り返している」の合計。「退職・計」は「休職期間中(もしくは復職直後)に退職している」「休職を経て復職後、しばらく勤務した後に退職している」「休職をせずに退職している」の合計。

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図表2 治療と仕事の両立をさせるための課題(複数回答、単位=%)(n=5904)

図表2グラフ

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政策的インプリケーション

慣習を含めるとほとんどの企業に病気休職制度がある。過去3年間でみると、病気休職者がいる企業は半数に及ぶ。とくにメンタルヘルスの病気休職者を抱えている企業の割合が高い。病気休職を経ても退職する割合は他の疾病に比べ高い傾向にある。メンタルヘルス対策は、経営課題としても重要視されているが、休職復帰後の仕事の与え方や代替要員の確保、再発防止など、職場復帰にかかわる課題への支援が必要となっている。

政策への貢献

社会復帰促進等事業に関する検討会や治療と職業生活の両立等の支援手法の開発等において、本調査のデータが活用されている。

本文

全文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。


研究の区分

課題研究「職業生活における就労と治療の両立に係わる調査」

研究期間

平成24年度~平成25年度

調査実施担当者

郡司 正人
労働政策研究・研修機構 調査・解析部次長
奥田 栄二
労働政策研究・研修機構 調査・解析部主任調査員補佐

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.63)。

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