労働政策研究報告書No.120
継続雇用等をめぐる高齢者就業の現状と課題

平成22年6月18日

概要

研究の目的と方法

団塊の世代が2007年より60歳を迎え、定年到達者が大幅に増える等、高齢者の能力を活用するための取り組みを早急に進める必要がある。そこで、本研究では、企業の60歳台前半の雇用の状況、65歳より先の雇用確保等に関する「高齢者の雇用・採用に関する調査」を実施し、同調査の分析により高齢者の就業促進のための課題を探るとともに、高齢者の就業形態選択、健康と就業決定の関係に関し既存調査の再分析を行う他、欧州諸国の近年の高齢者就業の現状・政策を概観し、高齢者が意欲と能力があれば、年齢にかかわりなく働けるような環境整備の在り方についての検討を行った。

主な事実発見

  • 高齢者雇用の促進は、賃金・人事制度の在り方が非常に重要である。定年年齢や継続雇用上限年齢の61歳以上への引き上げ等を図る上で、年齢的要素を重視する賃金・人事制度の見直しが示唆されるが、年功的要素を全くなくすのではなく、高齢者のモチべーションや生活の安定等に配慮する必要がある。継続雇用を進める際も、賃金は大幅な調整や過度に差をつけるべきでなく、高齢者の就業の実態や生活等を考慮する必要がある。
  • 高齢者雇用の推進は、高齢者の「戦力化」、高齢者の職業能力、高齢者の能力の適切な把握・評価が重要であり、高齢期になる前の働き方や能力開発機会の整備が重要である。
  • 50歳代の雇用保障、高齢者の中途採用、65歳より先の雇用確保等高齢者の活用を図っている企業は、高齢者の雇用が進んでいるものと考えられる。
  • 60歳以降の高齢者の雇用・就業決定は、60歳になるまでの働き方・職業キャリアが影響しており、企業の長期的視点に立った人事管理、人材育成、長い職業生涯を見据えた生活設計機会の提供や労働者のキャリア形成が重要である。
  • 制度面の高齢者就業への影響は、定年制度は継続雇用制度も含めた影響が重要であり、年金等公的給付は就業抑制効果が長期的には弱くなっている。他方、企業年金(退職給付)の影響も注目する必要がある。
  • 高齢者の就業には健康要因が影響し、精神的な健康も影響を与える可能性も示唆された。
  • 65歳までの雇用確保措置は継続雇用制度で基準に適合した者を対象という対応が中心であるほか、継続雇用の質的課題(賃金、処遇等)が挙げられる。また、65歳より先の雇用確保については多くの企業は実施も検討も行っていない。65歳より先の高齢者の雇用確保措置を行っている企業も企業の実情に応じた仕組みでの対応が多い。また、多様な雇用・就業形態を活用している。企業としても、高齢者の本格的活用が求められよう。
  • 高齢者就業支援策は、今後の雇用確保措置の整備の在り方、就業意欲を阻害しない制度設計、職業能力開発への支援、就業可能な環境整備、キャリア形成支援や健康対策の他、欧州諸国の経験から、労働(適応)能力と労働の質を高める政策、総合政策(社会保障と労働政策(若年・女性も含む)等の総合展開)の重要性が指摘できる。なお、高齢者の就業にはマクロ経済(需要)要因も影響しており、マクロ経済政策も重要である。

政策への貢献

企業における高齢者の継続雇用等の状況、高齢者個人の就業状況に関し多面的、詳細な分析結果や欧州諸国の高齢者雇用の現状と対策の概観は、65歳まで希望者全員の雇用が確保される施策や70歳まで働ける社会の実現に向けた施策について検討する上で有益な情報を与えている。

図 定年年齢と賃金プロファイルの傾きの関係

図 定年年齢と賃金プロファイルの傾きの関係/労働政策研究報告書No.120

 

注: 各年齢時の平均的な給与月額(千円)を示す。「60歳」は定年年齢を60歳に設定している企業、「61歳以上」は定年年齢を61歳以上に設定している企業を示す。「大卒」あるいは「高卒」は、当該企業における、正社員全体に占める割合が最も多い学歴層を示す。なお、定年年齢61歳以上の大卒カテゴリーは企業数が極端に少ない(38社)ため、参考値である。

本文

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研究期間

平成20~21年度

執筆担当者(執筆順)

藤井宏一
労働政策研究・研修機構統括研究員
清家 篤
慶應義塾大学商学部教授
馬 欣欣
労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー
山田篤裕
慶應義塾大学経済学部准教授
高木朋代
敬愛大学経済学部准教授
浜田浩児
労働政策研究・研修機構副所長
藤本 真
労働政策研究・研修機構研究員
山本克也
国立社会保障・人口問題研究所
社会保障基礎理論研究部第四室長
岩田克彦
職業能力開発総合大学校専門基礎学科教授

入手方法等

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