ディスカッションペーパー 16-02
職場の分断化現象
―問題提起と日米両国の現段階の法的対応―
概要
研究の目的
世界の労働法学界で話題になった「職場の分断化現象(Fissured Workplace)」について、これを提起したアメリカのDavid Weil教授の議論を紹介するとともに、この現象との関係で、日本国内でどのような問題があり、これまでにどのような法的対応がなされ、そしてどのような課題が残されているかを検討する。
研究の方法
本研究は国際会議への参加による情報収集も含め、先行研究の取りまとめを主な研究方法とする。
主な事実発見
- 職場の分断化現象は企業の「中核的競争力(core competency)」への追求から始まり、情報通信や労働者の管理・監督方法の革新によって現実化していった。
- アメリカでは、労務給付を必要とする大企業に相応の使用者責任を負わせるべきと主張する学説がある。
- 日本においては、従前から職場の分断化現象が利用されてきたが、近年におけるその利用拡大と新たな利用形態の出現には、従来の法理による対応が追いついていない。
政策的インプリケーション
これまでは業務処理請負、労働者派遣、親子会社といった契約形態別に対応してきたが、本稿に挙げられた間接雇用、あるいは雇用以外の労働力利用形態には、大企業側の人事コスト削減と、契約上の使用者責任潜脱という共通の目的が存在している。今後は、契約形態や就労場所を超えた俯瞰的な視点からの考察が必要となろう。
政策への貢献
- アメリカにおける職場の分断化現象の発生原因、史的展開に関しアメリカにおける議論を紹介した。
- 日本における職場分断化現象を史的展開に沿って整理し、今までの使用者概念に関連する法的対応をまとめた。
本文
研究の区分
プロジェクト研究「労使関係を中心とした労働条件決定システムに関する調査研究」
サブテーマ「規範設定に係る集団的労使関係のあり方研究プロジェクト」
研究期間
平成27年度
執筆担当者
- 仲 琦
- 労働政策研究・研修機構 研究員
お問合せ先
- 内容について
- 研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム
※本論文は、執筆者個人の責任で発表するものであり、労働政策研究・研修機構としての見解を示すものではありません。
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