ディスカッションペーパー 12-05
職業相談の困難場面における対応方法の研究

平成24年3月30日

概要

研究の目的と方法

本研究の目的は、公共職業安定所の職業相談の窓口において、職員が求職者等への対応に苦慮している困難場面をとりあげ、その対応方法に習熟する研修プログラムを開発するための基礎資料を得ることにある。そのため、公共職業安定所の職員である労働大学校の研修生を対象として、3種類の質問紙調査を実施した。

困難場面の経験について聞く自由記述形式の調査1により135事例を収集し、それらを28の困難場面の項目に整理した。調査2では、一般職業紹介の対象とならない3場面を除外した25の困難場面のそれぞれについて、相談窓口での対応の困難さを評価することを求め、分析の結果、12項目に絞った。12項目の困難場面に対応する調査1の59事例から、対応方法の記述部分を抜き出し、それらを9種類の対応方法に整理した(図表1)。困難場面ごとに9種類の対応方法を提示し、困難場面の対処として考えられる対応方法について聞く調査3を実施した。

図表1 困難場面における9種類の対応方法

図表2 9種類の対応方法/ディスカッションペーパー12-05

主な事実発見

  1. 調査2のデータを因子分析にかけ、職業相談の困難場面について、就職支援を進める上で求職者の意識や行動に課題がある「求職者の意識・行動上の課題」因子、職員がコントロールすることが難しい案件について求職者から苦情を受ける「求職者からの苦情」因子、求人者と求職者の間で希望や職場環境等の情報に相違がある「求人者と求職者の情報の齟齬」因子の3因子を抽出した(図表2)。

    図表2 職業相談の困難場面に関する因子分析

    図表2 職業相談の困難場面に関する因子分析/ディスカッションペーパー12-05

  2. 因子ごとに負荷の高い項目を見ると、求人と求職のミスマッチの関与が大きく、関与の仕方として、「情報レベルでのミスマッチ」、「情報レベルでは現れないミスマッチに対する苦情」、「求職者の思い込みやこだわりによるミスマッチ」の3つに分類することができた。
  3. 調査3のデータを数量化理論第Ⅲ類の分析にかけた結果、9種類の対応方法は、「求人者と求職者の希望を確認し、相手に伝える対応」、「労働市場ならびに仕事・働き方に対する求職者の認識の変容に働きかけていく対応」、「第三者や他の機関の機能を活用する対応」の3グループに整理することができた。また、「求人者と求職者の間の情報の齟齬」や「求職者からの苦情」といった困難場面では、「求人者と求職者の希望を確認し、相手に伝える対応」と関連性が強く、「求職者の意識・行動上の課題」といった困難場面では、「労働市場ならびに仕事・働き方に対する求職者の認識に働きかけていく対応」と「第三者や他の機関の機能を活用する対応」との関連性の強いことが明らかにされた。

政策への貢献

本研究で得られた知見を活用し、厚生労働省の協力のもと、研修プログラムを開発し、22の労働局で実施した。補論では、研修プログラムの効果に関する調査の結果を分析し、研修プログラムの前後で、職員が困難場面での対処がイメージできるようになるなどの研修の効果を報告した。

本文

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研究期間

平成23年度

執筆担当者

榧野 潤
労働政策研究・研修機構 主任研究員
柴田恵里佳
労働政策研究・研修機構 臨時研究協力員

入手方法等

入手方法

非売品です

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ

※本論文は、執筆者個人の責任で発表するものであり、労働政策研究・研修機構としての見解を示すものではありません。

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