ディスカッションペーパー 11-07
地域の成長分野における労働需要の推計
─電気機械・輸送機械製造業を対象に─
平成23年12月28日
概要
研究の目的と方法
- 本研究の目的は、政府の新成長戦略(平成22年6月18日閣議決定)で成長分野とされているもののうち、環境・エネルギー分野に焦点を当て、その主たる産業である電気機械器具および輸送機械器具製造業における労働需要のポテンシャルを地域別に推計することである。
- 具体的には、まず、経済産業省『工業統計調査』の事業所レベルのマイクロデータに厚生労働省『賃金構造基本統計調査』の地域・産業・従業者規模・就業形態別平均賃金・労働時間をマッチさせたパネルデータを作成し、労働需要関数の推定を行っている。次に、アウトプット(実質付加価値)の拡大や実質賃金の上昇といった外生的なショックを与えた際の労働需要の変化に関するシミュレーション分析を行っている。
主な推計結果
- 電気機械器具製造業のアウトプットが5%拡大した際の各地域における従業者数の変化は、従業者規模30人以上の事業所では、南関東(3.4%)、東海(3.2%)および近畿(3.1%)で伸び率が高いが、従業者規模29人以下の事業所では、近畿(3.3%)、北陸(3.2%)および東海(2.8%)で伸び率が高くなっている(図表参照)。
- 同様に輸送用機械器具の場合では、従業者規模30人以上の事業所で北海道(4.7%)、近畿(3.7%)、関東(3.6%)の伸び率が高く、従業者規模29人以下の事業所で近畿(3.1%)、東北(3.0%)、北陸(2.8%)の伸び率が高い(図表参照)。
- アウトプットの5%拡大に対し、地域の従業者数は比例的に増加しない。これらに実質賃金の上昇や労働時間の延長による調整が考慮されれば、従業者数の伸びはさらに抑制される。
政策的含意
- 環境・エネルギー分野関連の財需要が増加し、アウトプットが拡大することに対する事業所の労働需要の反応は、地域・産業・従業者規模によってばらつきがある。そのため、今後、新規投資や事業所立地を行う際には、地域における労働需要の反応の差異に配慮する必要がある。とりわけ、アウトプットの拡大だけでは十分に雇用を創出することが難しい地域については、追加的な対策が必要である。
本文
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研究期間
平成23年度
執筆担当者
- 中野 諭
- 労働政策研究・研修機構 研究員
入手方法等
入手方法
非売品です
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