ディスカッションペーパー 11-06
若年者の自尊感情の実態と自尊感情等に配慮したキャリアガイダンス
概要
研究の目的と方法
本研究は、若年キャリアガイダンスに関する基礎的な研究として若年者の自尊感情に関する知見を提示し、自尊感情等に配慮したキャリアガイダンスに向けた政策的な論点を提出することを目的とした。具体的には、労働行政等における若者の自尊感情に対する関心の高まりを指摘し、自尊感情に関する学術的な先行研究などの知見をふまえた上で、若年者の自尊感情に配慮したキャリアガイダンスに向けて検討すべき課題を指摘した。
上記の目的を達するにあたって、23~27歳までの若年就労者等5,576名(正規就労者・非正規就労者・求職者・無業者・専業主婦を含む)を対象とした調査データの再分析をもとに若年者の自尊感情の実態を検討した。その上で、若年者の自尊感情に配慮したキャリアガイダンスに向けて若干の政策的な示唆を行った。
主な事実発見
- 本研究の結果、無業の状態にある者、求職中の者、学校卒業時の就職に失敗したと感じている者、正社員として働いた経験の短い者、自分の職業の向き不向きなどを含めた将来の目標等が明確でない者で、特に自尊感情が低いことが示された。
図表1 現在の就業状況等による自尊感情得点の違い
- そのため、総じて正規就労への距離が遠い対象層に対して、特に自尊感情に配慮したキャリアガイダンスが重要であることを示唆した。
図表2 自尊感情に配慮したキャリアガイダンスの必要性
- また、若年者の自尊感情に配慮したキャリアガイダンスに向けて、個別支援のみならず、グループ支援および情報支援も重要であることを指摘した。特に、将来目標の明確化、他者からの受容、認知の変容、長所への焦点化、生活面での規律の回復などの有効性を論じた。
政策的含意
- 若年キャリアガインダンス全般について、職業やキャリアに関する直接的な支援だけではなく、それに先立つ心理面での支援(パーソナルな支援)をより重視すべきであることを述べた。自尊感情および就労に向けた意欲・意志を、よりいっそう重視することによって、若年キャリアガイダンスはよりいっそう実効を上げる可能性があることを示唆した。
- 自尊感情等に配慮したキャリアガイダンスを提供する人材については、職業やキャリアの相談支援を中心的に行っている人材に、自尊感情回復のための支援スキルを特に習得させるメリットを示唆した。
- 若年労働市場に参入してくる前の学校段階の若者の自尊感情を上げる方策についても十分に検討すべきであることを述べた。
本文
研究期間
平成22年度~23年度
執筆担当者
- 下村英雄
- 労働政策研究・研修機構 主任研究員
入手方法等
入手方法
非売品です
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- 研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム
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