ディスカッションペーパー 11-04
ジョブカードを活用したキャリア・コンサルティングの効果

平成23年4月22日

概要

研究の目的と方法

本研究は、求職者に対して企業が求める能力を面接や応募書類で効果的にアピールし就職につなげていく支援として、ジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングに注目し、「効果的にアピールできるようになること」という求職者の言語活動に焦点をあて、ジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングの効果を実証的に分析することを目的とする。

そのため、離職者等を対象とした職業訓練及びキャリア形成支援実施支援機関である2センターのキャリア・コンサルタント(回収数56通、回収率91.8%)及びクライエント(回収数160通、回収率63.7%)に対するアンケート調査を実施した。効果測定の指標として、キャリア表現インデックス(労働政策研究・研修機構資料シリーズ「キャリア表現インデックスの開発」(2011)としてその開発の詳細を紹介)を用い、ジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティング前後のキャリア表現力に関する評価(キャリア・コンサルタント調査については、ジョブ・カードの作成支援から交付まで一貫して担当したクライエントに対する評価。クライエント調査については、自己評価。このため両評価の対象とするクライエントは必ずしも一致しない。)等を調べた。

主な事実発見

ジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングでは、キャリア・コンサルタント、クライエント相互の活発なコミュニケーションを行いながら、キャリア・コンサルタント主導で進められているという特徴があった(図表1)。

ジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングの前後でみたキャリア表現力向上については、キャリア・コンサルタント、クライエントともに、効果があったという評価となった(図表2)とともに、キャリア・コンサルティング複数回実施の効果がみられた。

図表1 ジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングのプロセス

図表1 ジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングのプロセス/ディスカッションペーパー11-04

図表2 ジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングにおけるキャリア表現力評価の変化

図表2 ジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングにおけるキャリア表現力評価の変化/ディスカッションペーパー11-04

また、調査の自由記入欄には、ジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングに関する多くの意見が寄せられ(キャリア・コンサルタント調査では回答者の78.6%、クライエント調査では同73.8%が回答)、その内容は、ジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングによる効果として自己理解が深まることが最も多いこと、問題点として作成が難しいこと、ジョブ・カードの企業への認知を広めてほしいことが共通して多かった。

政策的含意

キャリア・コンサルタント、クライエントがともに、キャリア表現力の向上に対して効果があるという共通した結果となったことは、ジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングが、キャリア表現力の向上にプラスの影響を与えていることの証左と言える。

ジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングに関しては、新たなアピールポイントの発見を一層効果的に支援するために、その質的向上についてのノウハウを提供していく必要がある。またジョブ・カードの職業能力証明の部分については、さらに発展させて労働市場で横断的に流通させていく必要がある。このようにジョブ・カードの能力評価機能が高まれば、労働市場における効果的な需給マッチングにつながるとともに、企業の人材育成・確保と労働者の継続的なキャリア発達が促進され、ジョブ・カード有効性の実感が強まると考えられる。

政策への貢献

キャリアの転機と生涯を通じたキャリア形成努力を支援する仕組みとして、ジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングがより一層機能していくために、関係者の検討素材を提供した。

本文

研究期間

平成22年度

執筆担当者

西村公子
労働政策研究・研修機構 統括研究員
榧野 潤
労働政策研究・研修機構 主任研究員

入手方法等

入手方法

非売品です

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ

※本論文は、執筆者個人の責任で発表するものであり、労働政策研究・研修機構としての見解を示すものではありません。


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