スコアの悪化が将来の生産性の低下や機会不平等につながると懸念
 ―「PISA 2025」公表でOECD事務総長

カテゴリ−:若年者雇用

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  • 国別労働トピック:2026年9月

経済協力開発機構(OECD)は9月8日、「国際学習到達度調査(Programme for International Student Assessment (PISA) 2025)」の結果を発表した。報告書の公表にあたり、OECD事務総長のマティアス・コーマン氏が演説を行い、全体的なスコアが悪化したことについて、将来の仕事における生産性の低下や機会不平等の拡大につながると、懸念を表明した。また、科学分野で優秀な成績を収めた生徒が、将来も科学分野で活躍するよう、科学の魅力を伝え指導することが必要だと訴えた。

「科学」は横ばいも「読解力」「数学」は大きく低下

2025年のPISAには、世界91の国・地域から、76万人の15歳の生徒が参加した。科目は「科学(Science)」「数学(Mathematics)」「読解力(Reading)」の3つ。

報告によると、OECD加盟国の生徒の成績(平均スコア)は2022~25年にかけて、「科学」ではやや低下、「数学」と「読解力」では9~14ポイントと大きく低下した(図表1)。

これを長期的にみると、平均得点は、「科学」では2009年から2022年にかけて下降傾向だったが、2022年から2025年の間はやや低下ながら横ばいで推移した。

「数学」分野では、2015~ 25年にかけて22ポイント低下。「読解力」では、2015~25年に28ポイント減と最も大きな低下を記録した。

図表1:PISAテストのスコアの推移(OECD23カ国平均) (単位:ポイント)
画像:図表1

出所:OECD(2026)

コーマン氏は、調査結果から、科学分野でトップクラスの成績を収める約190万人の生徒のうち、ほぼ半数が30歳になっても科学、技術、工学、数学(STEM)分野での就労を期待していないことが示された点を問題視する。「我々の社会は、特に人口高齢化に伴い、科学技術系のスキルがより求められている。科学のスコアの高い優秀な生徒を科学分野に留めておくことが重要だ」と指摘。彼らは失うわけにはいかない才能だとして、生徒に興味を抱かせる科学の授業と、科学の未来についてより良い指導が必要とされていると訴えた。

すべての成績が悪い生徒の割合増を懸念

報告によれば、OECD全体で、5人に1人(20%)の生徒が3科目すべてで「低習熟度レベル」となり、2022年の6人に1人(16%)から悪化している。

この状況についてコーマン氏は、「これらの生徒は、今後の学習や仕事、日常生活に必要な基本的なスキルを欠いている。これは教室の枠を超えて重要で、スキルが低いほど生産性は低下し、均等な機会が減り、技術によって再形成される世界への適応も難しくなる」と懸念する。

さらに、こうした学力の低下が、2020年のコロナ禍より前からすでにはじまっていることを指摘。「もっと深い何かが起きている」との考えを示したうえで、2022年以降、1日1時間以上ソーシャルメディアに費やす生徒の割合が6ポイント上昇していることに触れ、「デジタルツールは生徒の学習に有益だが、障害にもなる」と、その利用方法について警鐘を鳴らした。

衰退を避けるには集中と行動が必要と訴え

過去10年間のテスト結果を国別にみると、トルコやアラブ首長国連邦、モンテネグロ、カタール、スロバキアでは、いずれも低スコアの生徒の割合が減少するとともに、高スコアの生徒割合が増加している。同氏は「全体のスコアを上げるとともに格差を縮小させることは可能」と述べ、そのために必要な「6つの優先事項」を挙げた。

前述の「優秀な科学の生徒を科学の分野にとどめておくこと」の他の重点項目は以下のとおりである。

  • 基礎的な内容をしっかりと習得させる
  • 教師が最高の仕事をできるよう、必要なものを提供する
  • 保護者を子どもの学習に巻き込む
  • 最も支援を必要とする学校や生徒にできるだけ多くの支援を行う
  • 教室でAIやデジタルツールを、慎重に、目的を持って、適度に活用する

そのうえでコーマン事務総長は、OECDは、各国が互いに学び合い、この結果をより良い政策や実践に活かしていくことを支援すると表明し、「衰退は避けられないものではなく、急速に成長している国々がそれを証明している。ただし、状況を好転させるには集中力、規律、そして行動が必要だ」と訴えた。

国の豊かさだけでスコアの高低は決まらない

調査結果によると、「科学」「数学」「読解力」すべての分野で高いスコアを収めたのは、中国(北京、上海、江蘇、浙江)、エストニア、日本、韓国、シンガポール、マカオ(中国)、台湾、イギリスなどだった。

また、全体的に「読解力」が大きく低下した原因については、スクリーン時間の増加や読書離れ、デジタル機器による集中力の欠如の影響を示唆している。人工知能(AI)の活用が成績に及ぼす影響は、単純ではなく複雑で、功罪があると分析している。

そして、国別の結果について、報告書は「もはや豊かで教育水準の高い国と、貧しく教育水準の低い国に分かれている訳ではない」と分析する。国の経済に関わらず、より良い政策や賢明な支出によって、生徒の学力を向上させることができる、と主張している。

参考文献

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