中高齢者雇用支援を拡充
―労働部、制度緩和で再就職とシニア人材活用を後押し
台湾労働部は4月10日、中高齢者および高齢者の就労支援策を見直し(注1)、「55歳からの就業促進措置」と「高齢者継続雇用補助計画」の制度を大幅に緩和・拡充すると発表した。退職後の再就職を促進するとともに、企業による高齢者の継続雇用を後押しし、深刻化する人手不足への対応と技能・経験の継承を図る狙いがある。
深刻な少子高齢化と労働力不足
台湾では近年、出生率の低下と高齢化の進行が同時に進み、労働力人口の減少が顕著となっている。「台湾人口推計(2024~2070年)」によると、2024年時点の総人口は2,340万人で、このうち15~64歳の生産年齢人口は1,617万人、65歳以上の高齢者人口は671万人となっており、すでに人口減少局面に入っている。
将来推計では、総人口は2070年に1,497万人まで減少し、約844万人の減少が見込まれる。内訳を見ると、0~14歳の年少人口は171万人、15~64歳の生産年齢人口は920万人それぞれ減少する一方、65歳以上の高齢者人口は248万人増加すると予測されている。
高齢者人口の割合は上昇を続けており、企業の現場では人手不足が深刻化している。こうした中、政府は中高齢者の労働参加の拡大を重要政策の一つに位置づけ、再就職支援や職場環境の整備を通じて、労働市場への定着を促進してきた。
中高齢および高齢者のパートタイム就労傾向
「中高齢および高齢者の就業促進法」では、中高齢者とは満45歳以上65歳以下の者を指し、高齢者とは65歳を超える者を指す。
労働部によると、労働力参加率は55歳以降に大きく低下し、日本・韓国・米国などの主要国と比べても著しく低い水準にある。中高齢者が労働市場から離脱する背景には、年齢を理由とした退職が大きな要因の一つとなっている。実際、45~49歳では約6%にとどまるものの、55~59歳で31.4%、60~64歳では37.8%と、年齢の上昇に伴い、その割合は55歳以降に急速に高まる傾向がみられる(図)。
こうした中、離職後の再就業においては、フルタイムではなくパートタイムを選択する傾向が強まっている。パートタイム就業者の年齢構成をみると、50歳以上の層では3割超を占めている。さらに、実際の就業形態においても50歳以上の層におけるパートタイム比率は全体を上回っており、高齢層ほど短時間就労へのシフトが顕著である。
図:年齢別による離職原因

出所:「2024年人材運用実態調査報告」より作成(注2)
注:台湾労働基準法第53条では、労働者は、①勤続15年以上かつ満55歳以上、②勤続25年以上、または③勤続10年以上かつ満60歳以上のいずれかの要件を満たした場合、使用者に対し、自ら定年退職を申し出ることができる。
中高齢および高齢者就業の法整備
こうした課題に対応するため、台湾では「中高齢および高齢者の就業促進法」(注3)を基盤に、包括的な政策体系が構築されている。
労働部は2026年2月10日、中高齢者および高齢者の労働参加拡大に向け、同法に基づく「中高齢者及び高齢者就業促進計画(2026~2028年)」(注4)を打ち出した。少子高齢化の進展に伴う労働力不足への対応を目的とし、総額107億新台湾ドルを投じる包括的な施策となっている。年齢層ごとの就業ニーズや能力差を踏まえ、段階的かつ多様な支援策を展開する。具体的には、再就職支援、職業訓練の強化、企業への雇用インセンティブ、柔軟な就業環境の整備など、計100項目に及ぶ施策が盛り込まれている。
就業支援の目標人数については、2026年に13万2,000人、2027年に13万7,000人、2028年に14万2,000人と段階的に拡大させる計画であり、3年間で累計40万人超の中高齢者・高齢者の就業機会の確保を目指す。これにより、定年後の再就職やキャリア継続を後押しし、労働市場への定着を図る狙いがある。
「55歳からの就業促進措置」(注5)で再就職奨励金の給付を緩和
「55歳からの就業促進措置」は、満55歳以上、または満45歳以上で法令に基づき退職した者を対象とする。中高齢者が再び労働市場に参加し、その知識や経験を発揮できる環境を整えることを目的として、2024年に導入された。2025年には、同制度により約5,000人が再就職を果たし、さらに約1,500人に対して職場環境の改善や就業条件の見直しが行われるなど、一定の成果を上げている。
今回の制度見直しでは、労働市場の多様化や柔軟な働き方の広がりを踏まえ、主に4つの点で要件が緩和された。
第一に、就業奨励金の給付基準緩和である。パートタイム労働者(中高齢者)については、従来、就業奨励金を受給するためには最低賃金の2分の1以上の賃金水準が必要とされていたが、現在は基準が引き下げられ、45~54歳は最低賃金の2分の1以上と変わらないものの、55~64歳は最低賃金の3分の1以上(2分の1未満)、65歳以上は4分の1以上(3分の1未満)であれば対象となっている。それぞれ月額5,000新台湾ドル、3,500新台湾ドルおよび2,500新台湾ドルの就業奨励金が支給される。(表)
| 区分 | 給付条件(最低賃金基準) | 支給額(月額) | 支給期間 | |
| フルタイム労働者 | 条件なし | 10,000新台湾ドル | 最大6か月 | |
| パートタイム労働者 | 45~54歳 | 最低賃金の1/2以上 | 5,000新台湾ドル | 最大6か月 |
| 55~64歳 | 最低賃金の1/3以上~1/2未満 | 3,500新台湾ドル | 最大6か月 | |
| 65歳以上 | 最低賃金の1/4以上~1/3未満 | 2,500新台湾ドル | 最大6か月 | |
出所:「55歳からの就業促進措置」より作成
第二に、奨励金受給要件(雇用期間)の短縮である。奨励金の受給に必要な雇用期間を、90日から30日に引き下げた。公的就業サービス機関の紹介により就職した場合、就業開始から30日を経過すれば奨励金の対象となり、最長6カ月間、奨励金を受給できる。
第三に、非自発的離職後の奨励金受領条件の緩和である。通常、就業奨励の再申請には「離職後3か月以上」の待機期間が必要とされるが、非自発的離職により奨励金の受給期間(最長6か月)を満了していない労働者については、この要件が緩和される。具体的には、公立就業サービス機関で求職登録および相談を行えば、3か月の離職期間を待たずに再び奨励金の申請が可能となる。
他には、雇用形態の拡大がある。従来は無期限契約に限定されていたが、今回の見直しにより有期契約も対象に含めた。これにより、季節労働やプロジェクト型業務など、多様な就業機会へのアクセスが可能となり、中高齢者の選択肢が広がることが期待される。
「継続雇用補助計画」(注6)で企業のインセンティブを強化
高齢者人材(65歳以上)の職場定着を促進するため、「高齢者継続雇用補助計画」の運用を見直し、申請受付をこれまでの期間限定から通年(年間12か月)へと拡大した。企業側の利便性向上と人材確保の柔軟化を図る狙いがある。
従来、本制度の申請は毎年9月から10月の限られた期間に限定されており、企業からは「申請期間が短く活用しにくい」との指摘が出ていた。今回の見直しにより、企業は人員配置や経営状況に応じて通年制度による随時申請が可能となった。
あわせて、継続雇用比率の算定基準についても見直しが行われ、企業にとって理解しやすく、実務上の運用負担を軽減する内容へと改善された。これにより、中小企業を含めた幅広い企業の活用が見込まれる。
同制度は、65歳以上の労働者を一定割合以上で継続雇用し、かつ6か月以上の雇用継続や賃金水準の維持などの要件を満たす企業に対し、補助金を支給するもの。対象は、就業保険に加入する民間企業や団体、私立学校などで、従業員数が3人以上であることが求められる(雇用している労働者が雇主の配偶者または三親等以内の親族である場合は、当該人数には算入しない)。
賃金については、65歳到達前の一定期間の平均賃金を基準とし、継続雇用後もこれを下回らないことが要件とされる。また、賃金形態の変更があった場合の算定方法も明確化され、企業にとって理解しやすい仕組みとなった。
申請にあたっては、雇用証明や賃金資料などの提出が必要で、条件を満たした日から90日以内に申請する必要がある。補助は原則として65歳到達後から起算され、30日を1か月として支給される。
一方、虚偽申請や実態のない雇用、重複受給などが認められた場合には、不支給や返還措置に加え、一定期間の申請停止措置が講じられる。
労働部は、今回の制度改正を通じて、年間約1,500人の高齢者の就業継続を支援する目標を掲げた。
労働力の高齢化と産業界の人手不足が同時進行する中、中高齢者および高齢者をいかに活用していくかは、今後の政府と企業経営における重要課題であると指摘されている。今回の制度改正により、シニア人材の就業継続と技能伝承の両立が進むことが期待される。
注
- 勞動部優化中高齡獎助措施,助銀髮人才職場續航-勞動部全球資訊網中文網
(本文へ) - 2024年人材運用実態調査報告
表83より作成(本文へ) - 中高齡者及高齡者就業促進法
(本文へ) - 「中高齡者及高齡者就業促進計畫
」(2026-2028年)(本文へ) - 行政院公報資訊網 | 勞動部令:修正「五五就業促進獎勵實施要點」部分規定及第17點附表4、附表6,自即日生效
(本文へ) - 行政院公報
(本文へ)
参考文献
- 台湾労働部、行政院
参考レート
- 1台湾ドル(TWD)=5.06円(2026年4月22日現在 みずほ銀行ウェブサイト
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