若者が求める職場
 ―全国経済人連合会調査結果より

カテゴリー:若年者雇用

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  • 国別労働トピック:2023年5月

韓国の経済団体、全国経済人連合会(以下、全経連)がMZ世代(注1)と呼ばれる若者827人を対象に、韓国の企業に対して抱くイメージを調査した(注2)。その結果、MZ世代が経営陣のリーダーとして好むタイプは「コミュニケーション型リーダー」であること、企業のイメージ向上のためには「企業内組織人員間のコミュニケーションの強化」を重視していること、そして就職したい企業には「ワーク・ライフ・バランスが保障されている企業」を選択すること、などが明らかとなった。以下は全経連の調査結果の概要である。

MZ世代はコミュニケーションを重視

MZ世代が好む経営陣のリーダーはどういうタイプか。職員と共に悩み、オープンな意思疎通をとおして意思決定する「コミュニケーション型リーダー」、強いカリスマ性を土台に迅速な決定を下す「カリスマ型リーダー」、職員に権限を委任し、業務遂行にあたって職員の自律性を重んじる「委任型リーダー」の3タイプから、MZ世代が最も好むタイプを選択させたところ、「コミュニケーション型リーダー」を選んだ割合が77.9%と最も多く、次いで「カリスマ型リーダー」が13.9%、「委任型リーダー」が8.2%、という結果となった。

また、企業イメージの向上に必要な要素は何かという質問に対する回答では、以下のような結果となった。

「コミュニケーションの強化」(37.2%)、「積極的投資及び雇用創出」(29.7%)、「良質な製品・サービスの生産」(24.7%)、「ESG(注3)の積極的実践」(5.7%)、「企業の役割に関する広報」(2.7%)。

MZ世代は、生産、投資、雇用創出といった企業の伝統的な役割以上に、企業の構成員間のコミュニケーションを重視しており、全経連は今後、若者にとって魅力ある企業となるためには、積極的なコミュニケーション努力が必要になるだろうと見ている。

事実、企業の中には昨今、様々な方法でMZ世代とコミュニケーションを試みる事例が見られる。表1は企業の経営陣とMZ世代とのコミュニケーションの具体例である。このような企業のコミュニケーション活動に対してもMZ世代の評価は「肯定的評価」(70.2%)が「否定的評価」(7.9%)を大きく上回った。

表1:国内主要企業の経営陣とMZ世代とのコミュニケーションイベント
企業名 コミュニケーションイベント
サムスン電子
  • 会長と新入社員の懇談会
  • リアルタイムのユーチューブコミュニケーションチャンネルの運営
現代自動車
  • 心の相談 トークコンサート
  • タウンホールミーティング方式の新年会
SK
  • 会長と職員間の質疑応答イベント
  • オンライン新入社員との対話
LG
  • オフラインによる仕事始め式をなくし、デジタル映像による新年あいさつ
  • 従業員コミュニケーションチャンネルの運営、CEOによる直接答弁(LGエナジーソリューション)
ロッテ
  • 若手が質問し、CEOが答える百問百答(ロッテ建設)
  • 職員とともにティーミーティング(ロッテショッピング)

出所:各社のホームページ及び発言を総合して全経連が作成した資料を基にJILPTが作成(原資料を要約、一部抜粋している)。

MZ世代の職場選択基準はワーク・ライフ・バランス

MZ世代が就職したいと思う企業(職場選択基準)については、「ワーク・ライフ・バランスが保障される企業」が「給料と成果補償体系が整った企業」を上回った(表2)。

表2:職場選択基準
項目
ワーク・ライフ・バランスが保障される企業 36.6
給料、成果補償体系が整った企業 29.6
定年保障、長く働ける企業 16.3
企業・個人の発展可能性の高い企業 10.4
企業 文化が水平的、コミュニケーションが良い企業 3.8
社会的貢献度が高い企業 3.3

出所:全経連の資料を基にJILPTが作成。

MZ世代が給料や定年保障よりも個人の生活を重視している点について、全経連は、働き方に対する認識の変化が反映された結果であると解釈している。

MZ世代が企業に対して抱くイメージ

本調査では、MZ世代が韓国企業に対してどのように考えているかについても調べている。大企業、中堅企業、中小企業、公企業、スタートアップ企業それぞれに対して、彼らが抱く「好感度」、韓国の経済社会発展への「貢献度」、そして革新と成長の「可能性」という「好感度」「貢献度」「可能性」について3段階で評価させた結果は、表3表4表5のとおりとなった。

表3:企業に対して抱く好感度 (単位:%)
  好感 中立 非好感
大企業 64.4 28.5 7.1
中堅企業 51.2 41.0 7.8
中小企業 21.1 42.8 36.1
公企業 46.6 36.0 17.4
スタートアップ企業 38.0 46.5 15.5

出所:全経連の資料を基にJILPTが作成。

表4:経済社会の発展への貢献度 (単位:%)
  貢献している 普通 貢献していない
大企業 89.4 8.9 1.7
中堅企業 80.0 17.9 2.1
中小企業 50.8 37.6 11.6
公企業 47.4 38.4 14.2
スタートアップ企業 47.3 39.0 13.7

出所:全経連の資料を基にJILPTが作成。

表5:革新成長の可能性 (単位:%)
  高い 普通 低い
大企業 73.4 20.7 5.9
中堅企業 62.6 31.1 6.3
中小企業 36.1 39.2 24.7
公企業 27.6 40.3 32.1
スタートアップ企業 59.4 31.1 9.5

出所:全経連の資料を基にJILPTが作成。

また、調査では企業の寄付活動についての認知度についても尋ねている。結果は、「よく知らない」(40.5%)と「全く知らない」(9.8%)の合計が、「いくぶん知っている」(39.1%)と「とてもよく知っている」(10.6%)の合計を上回り、企業が活発に寄付活動等を行っているにもかかわらず、MZ世代の半数以上にその事実が認知されていないことが明らかとなった。

全経連、より関心を持たれる努力を企業に期待

本調査結果について、イ・サンユン全経済CSR本部長は次のようにコメントしている。「若いMZ世代は、概ね韓国企業と企業人を肯定的なイメージで捉えているが、企業が多くの社会貢献活動を行っていることはあまりよく知られていない。企業は積極的にコミュニケーションを図る努力を続けていきながら、社会からより多くの関心を持たれるようになり、社会から応援されるようになれば、企業にとっては大きな力となるだろう」。

参考資料

  • 全国経済人連合会ウエブサイト
  • 聯合ニュース(2023年4月10日)

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