政府が「働く女性のための生涯キャリア維持支援策」を発表

カテゴリー:労働条件・就業環境

韓国の記事一覧

  • 国別労働トピック:2014年3月

政府は2月4日の閣議において、「働く女性のための生涯段階別キャリア維持支援策」を発表した。今回の支援策は、出産後の女性のキャリア・ブレークを最小限にとどめるために支援の期間と金額を拡充した。(1)妊娠・出産時の雇用維持、(2)乳幼児保育と小学生の子供ケア支援、(3)時間選択制雇用の拡大を通じた再就職斡旋、(4)柔軟な勤務体制の構築による女性雇用の促進――などの内容を盛り込んでいる(表1)。

女性就業率の改善が就業率70%達成のカギ

朴槿恵政権は、就業率70%の達成を最優先の政策目標としており、その達成のためには女性の就業率を引き上げる必要がある。韓国の女性就業率は、25~29歳は男性とほぼ同水準の68%(男性は69.6%)であるが、結婚と妊娠・出産を経験する30代は56.7%(男性は90.2%)にとどまる(表2)。女性人材の遊休化が懸念される、いわゆるキャリア・ブレーク現象を示している。女性の賃金労働者に占める非正規雇用の割合も高く、40~44歳は38.8%と男性を20.4ポイントも上回っている(表3)。これらを改善することによって、女性の就業率を向上させ、全体の就業率も引き上げることができる。

男性の育児休業者に対する支援の拡大

政府は、女性に偏った育児負担を軽減するため、「育児は女性の役割」という社会的認識からの脱却を狙っている。夫婦で2番目に育児休業を取得した人に対し、最初の月に限って、育児休業給付を従来の通常賃金の40%から100%(最高150万ウォン)に引き上げる、男性のための育児休業活性化策を講じる。夫の育児休業に伴う経済的な損失を軽減するため、夫婦が育児休業を交互に利用することにより、女性のキャリア・ブレークを最小限にすることをめざしている。育児休業の名称も「親の育児休業」に変更した。

子供ケア・サービスを利用できる優先順位も、低所得の共働き夫婦と一般的な共働きの夫婦をそれぞれ第1位および第2位とし、それに続いて、低所得専業主婦、一般的な専業主婦の順とした。既存の申し込み手順に従った「先着順方式」では、職場の女性が恩恵を受け難い現実を勘案したものである。国公立の保育園も毎年150カ所ずつ増やしていく計画である。一部の保育園のみで実施していた「子供の家の評価認証制度」も義務化する。

労働者世帯のうち、43.5%を占める共働き世帯が政策の受益者となるが、男性の育児休業者の多くは中堅企業以上で働いている。中小企業では人手不足のため、育児休業を取得することが容易ではない。そのため、政府の政策が大企業と中小企業間の労働条件格差を拡大し、中小企業をより忌避させる副作用を生じさせるという指摘もある。

労働時間短縮制度の取得可能期間を延長

現在の労働時間短縮制度では、法定の育児休業期間(1年)から、実際に育児休業した期間を除いた残りの期間のみ、週15~30時間に労働時間を短縮することができる。しかし、今後はこの期間を最長2年に延長する。例えば、これまでは、育児休業可能期間1年のうち、6カ月育児休業した場合、労働時間短縮制度は6カ月しか利用できなかった。改善案では、育児休業可能期間1年を通じて労働時間短縮制度を利用した場合、育児休業を取得しなかった1年を労働時間短縮制度の期間として延長できるようになる。

賃金は短縮した労働時間に比例して支払われる。それとは別に、労働者は育児休業手当を受給できる。その支給率が現在の通常賃金の40%から60%に引き上げられ、上限額も62万5000ウォンから93万7500ウォンに引き上げられる。雇用労働部は「既存の労働時間短縮制度は、昨年の利用者が700人余りにとどまり、利用実績が低調であった。働く女性が育児への負担を少なくし、継続して働くことができるよう配慮した」と説明した。

さらに、雇用不安が深刻な非正規雇用も育児休業が取得できるようにする対策も推進する。政府は、育児休業している非正規雇用との労働契約を延長する企業に対し、1人当たり月30万~60万ウォンの継続雇用支援金を支給する。 1年以上の労働契約の場合は月40万ウォンを6カ月間、無期契約の場合は6カ月間、月30万ウォンを支給した後、再度6カ月間、月60万ウォンを支援する方式である。現在では、出産休暇の前後で労働契約を延長する場合のみ、非正規雇用に対する雇用助成金を支給している。これを育児休業者まで拡大する。

時間選択制雇用に対する保育支援の拡充

時間選択制雇用として働く親のための時間制保育班を新設する。1日あたり6時間利用できる時間制保育班を保育園や子育て総合支援センターなどに新設し、今年試験運用した後、来年から全国に拡大する計画である。

子供ケア・サービスの優先順位を働く母親に与えたことにより、脆弱階層である低所得専業主婦が一般家庭の働く母親よりも優先度が低くなり、逆差別であるとの指摘もある。

小学校の放課後の子供ケア教室を、希望するすべての小学生が午後5時まで利用できるよう、2016年までに段階的に拡大する。共働き・ひとり親家庭の子どもなど、追加ケアが必要な学生は、学校の状況に応じて、夜10時まで利用できるようになる。

女性の再就職段階では、キャリアタイプに応じたサービスを提供する。キャリア・ブレーク期間が短い高学歴・専門職の女性はすぐに現場復帰できるよう、別途採用プロセスを新設する。また、新しい分野に再就職を希望する女性は、「女性が新しく働くセンター(セイルセンター)」で専門職の職業訓練を受けられるようにし、一定レベルの職業訓練も支援する。この他、時間選択制雇用を数多く創出できる職務を発掘して企業に紹介するとともに、時間選択制雇用の専用ワークネット、代替人材バンクなどの採用インフラも拡充していく方針である。

出所:雇用労働部

図1

出所:雇用労働部

図2

出所:雇用労働部

参考レート

2014年3月 韓国の記事一覧

関連情報