社外役員の女性比率に割当制導入
―欧州委、指令案を公表
欧州委員会は11月、域内の上場企業などに社外取締役の女性比率の割当制を導入する指令案を公表した。2020年までに40%の達成という目標を課し、未達成企業に対する制裁措置を盛り込んだ法制化を加盟各国に求める内容だ。
目標値40%以上、各国で罰則規定設置
女性役員比率の割当制は、経済的な意思決定における平等を促進する施策として、ヴィヴィアン・レディング司法・基本権・市民権担当欧州委員が以前より導入の意向を示していた。同委員は2011年3月、法律による義務化に先立つ措置として、企業の自主的な取り組みを求める「Women on the Board Pledge for Europe」を呼びかけた。2015年までに30%、2020年までに40%の目標達成の誓約を求める内容で、1年の期限を設けて参加企業を募った。しかし、期間内に参加を表明した企業はEU全体で24組織に留まったことから、改めて法制化の作業が開始された。
欧州委が9月に作成した当初案は一般には公開されていないが、現地メディアによれば、未達成企業に対する罰金または政府調達への参加や補助金の受け取りを禁じるなどの制裁措置が盛り込まれていた。これに、イギリスやスウェーデンなど、女性役員比率に関する法規制を設けていない加盟国や、他の欧州委員などから反対が相次いだほか、欧州委の法律部門も違反企業への罰則を指令に盛り込むことに難色を示したため、レディング委員は当初案の修正を余儀なくされたという。
最終的に11月に議会に提出された指令案は、違反に対する罰則の設置は必須としつつも、具体的な内容は各国に委ねた。従業員規模が250人以上で、売上高の合計が5000万ユーロを超える上場企業に対して、非常勤役員に女性(男性が少ない場合には男性)比率40%以上を目標値とする割当制を課し、2020年(公企業は2018年)までの達成を求める。ただし、社外取締役の目標に替えて、取締役の女性比率に関する自主的目標を設定することを認めている。また、目標値の達成のために自動的に女性を登用する必要はなく、未達成の場合も、資格や業績などの明確な基準を設置する(同等と判断される場合のみ女性を優遇)などの必要な手段が講じられているかが判定される。
各国の実態と施策は多様
女性役員比率に関して加盟各国が現在実施している施策は多様だ。例えば、フランス、イタリア、ベルギーは制裁措置を伴う法律を整備している(注1)が、義務付けている比率、達成期限、対象企業の範囲、違反の際の罰則などはそれぞれ異なる。またオランダとスペインは、目標比率に関する法整備は行なったが、制裁措置は設けていない。オランダでは大規模企業の役員について、30%以上の目標が設定されている。またスペインでは、同じく大企業の役員について、2015年までに40%以上とするよう提案する法律が2007年に成立している。さらに、デンマーク、フィンランド、ギリシャ、オーストリアおよびスロヴェニアでは、国営企業についてのみ割当制を課している。このほか、政府や公益機関などが目標値を示して自発的な達成を促す施策が複数の加盟国で実施されている。
各国の女性役員比率の現状も多様だ。今回目標値が設定される社外取締役はEU平均で15%、フィンランド(27.9%)やスウェーデン(26.5%)、ラトヴィア(25.9%)、フランス(24.2%)では20%を大きく上回っているが、反面マルタ(2.7%)、キプロス(3.3%)、ハンガリー、ポルトガル(いずれも5.4%)をはじめ、半数以上が平均値を下回っている。
図 EU各国の女性役員比率(2012年1月)
参考:"Women on boards - Factsheet 2: Gender equality in the Member States", European Commission
注
- 2003年に4割義務化の法整備を行い、速やかな状況の改善をみたノルウェーにならったもの。欧州委もノルウェーをモデルケースとして参照していた。なおノルウェーでは、未達成企業に対して企業の解散を求める厳しい罰則内容となっている。
参考資料
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