中小企業で雇用減少の懸念
―非正規労働者保護法の対象拡大が影響か

カテゴリー:雇用・失業問題非正規雇用

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  • 国別労働トピック:2008年6月

「格差是正」、「雇用創出」という国民の大きな期待を背負い本年2月に発足した李明博政権であるが、4月の総選挙では与党ハンナラ党が議席の過半数を獲得したものの、物価高と景気減速が進展する中で雇用情勢も厳しい状況が続いており、就任早々から多難な政策運営を強いられている。

最近の雇用情勢を示す各指標は国内経済の減速傾向を反映して厳しいものとなっている。失業率は1月3.3%、2月に3.5%のピークをつけた後、3月3.4%、4月3.2%と若干改善傾向がみられるが、李大統領が特に注力すると公約した若年者(20-29歳台)の失業率は1月6.9%、2月7.4%、3月7.6%、4月7.4%と依然高い水準で推移している。就業者数(自営業、家族従業員含む)も2007年後半は前年比概ね1.3%増で推移していたが、2008年に入り1月は同1.0%増(23.5万人増)、2月0.9%増(21万人同)、3月同0.8%増(18.4万人同)と就業者の伸びにブレーキがかかっている。このまま推移すると、公約として掲げた年間雇用創出50万人はおろか、その後目標として引き下げた35万人にも届かない見通しとなっている。

こうした中、関係筋の分析では、最近の就業者数の伸びの鈍化の背景として、景気減速による採用手控えなどのほかに、非正規労働者保護法の施行の影響が挙げられている。就業者の内訳を本年第1四半期でみると、賃金労働者のうち正社員の多くを占める常勤労働者は前年比43.5万人増(0.5%増)であるのに対し、非正規労働者である臨時雇(契約1カ月~1年未満)及び日雇(同1カ月未満)はそれぞれ前年比9.9万人減(1.9%減)、2.5万人減(1.2%減)となっている。臨時雇及び日雇の減少割合は、特に100~299人規模企業において著しく、300人以上企業では0.1%増、100人未満企業は1.1%減である一方で、100~299人未満企業は15.4%減と大幅な落ち込みとなっている。これは、昨年7月1日に大企業と公共機関を適用対象に施行された非正規労働者保護法が今年7月から100~299人規模の中小企業もあらたに適用対象に追加されるため、これら企業において非正規労働者の新規採用が手控えられ、また解雇されるケースも増えているためとみられる。こうした問題の発生については同法制定に反対した野党や労働団体から懸念の声があがっていたものである。

政府はこうした事態を憂慮し、また公約として掲げた雇用問題をあらためて重視していく姿勢を示しつつ所要の対応を図っていくこととしている。具体的には今後、非正規労働者の雇用期間の見直しや派遣労働業種の規制緩和のほか、非正規労働者を正社員に転換した中小企業に法人税を一部減免するなどの施策を準備しているとみられる。

出所

  • 韓国労働部Web、韓国統計庁Web、NNA

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