有権者、格差是正と雇用創出を期待
―大統領選、李明博氏の圧勝

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2008年1月

韓国の第17回大統領選挙が12月19日に実施され、野党ハンナラ党候補の李明博氏が48.7%の得票率で他の候補を圧倒し当選した。李明博氏をめぐっては株価操作事件をはじめ多くの不正疑惑が取りざたされたが、盧武鉉政権の経済運営に対する不満から、有権者は「経済に強い」財界出身の李明博氏を選択した結果となった。

民族的な理想を追い求めた盧武鉉大統領は北朝鮮に対する宥和政策に力を注いだが、足元の経済状況は悪化し、所得格差が拡大した。新規採用を手控える企業の増加により若年者は厳しい就職難に直面し、その間パート・派遣などの非正規雇用の比率も賃金労働者全体の約4割に達するなど、韓国国民には閉塞感が蔓延した。こうした盧武鉉政権の経済「失政」への国民の不満を背景に、今回の大統領選では「格差是正」及び「雇用創出」が重要な争点となった。経済団体である韓国経済人連合会が投票直前に実施した世論調査では、次期大統領の取り組むべき最優先課題として5割以上の者が「雇用創出」を挙げ、次いで多かったのが「労使関係の安定」(約25%)であった。

李明博氏は、年7%の経済成長、年間=50万人、5年間=300万人の雇用創出、若年者の非正規労働の50%縮小、女性雇用一50万人創出などの経済・雇用政策を公約として掲げ、特に若年者の失業対策に力を入れるとし、現下の7%台の若年者失業率の大幅な改善を約束した。一方、与党候補の鄭東泳氏も年6%の経済成長、5年間で250万人の雇用創出などを掲げたが、その内容は李明博氏の公約に比べ見劣りするものであった。

李明博氏が掲げた高い経済成長率目標や雇用創出の公約に対し「現実的な数値ではない」、「大衆受けを意識したポピュリズムである」との批判が専門家の一部から出された。しかし、国民の多くは李明博氏の現代建設における経営実績とソウル市長時代に見せた実行力に、彼なら韓国経済を立て直すことができると期待し、票を投じたものとみられる。

2008年2月に李明博政権が新たに発足することとなるが、同年4月には総選挙が予定されており、与野党の枠組みを超えた大規模な政界再編が起きる可能性も指摘される。圧倒的な得票率で国民の支持を受け当選した李明博氏ではあるが、今後の政局と世論の動向次第では就任1年目から多難な政策運営を強いられると見る向きもある。

出所

  • 韓国労働部WEB、時事ワールド、NNA

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