雇用なき経済成長

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2004年8月

スウェーデン政府によると、2004年のGDP成長予想率は2.6%、2005年は2.7%という順調な経済成長が予測されている。しかし、経済の成長とともに通常低下するはずの失業率は依然5%台で高止まりしており、雇用なき経済成長(ジョブレス・リカバリー)が問題になりつつある。

生産性の上昇と休暇取得の変化

雇用なき経済成長は、近年の“生産性の上昇”や“休暇取得方法の変化”と密接な関連がある。労働市場庁(AMS)によると、従来スウェーデンのほとんどの産業では7月頃に3週間~5週間のまとまった休暇日を設定して、職場を閉鎖するのが一般的であった。しかし現在では厳しい生産競争を背景として、製造業分野の多くが夏期期間中もフル稼働させて生産を行っている。その中で従業員は、休暇が集中しないように各自が調整した上で長期休暇を取得するか、あるいは細切れの休暇を取得するようになっている。さらに近年では技術革新等によって生産性が上昇し、より少ない労働者でより多くの生産が可能となっている。昨年だけで生産性は8%上昇しており、これが雇用の余剰人員を産み、失業率が高止まりを続ける要因となっている。

すすむ雇用の海外移転と雇用削減

ここ数年、大手企業のエレクトロラックス、エリクソン、テリアソネラなどが相次いで雇用削減計画を打ち出している。家電メーカー大手のエレクトロラックスは、昨年海外に2000人分の雇用を移転する一方で、国内の7000人分の雇用を削減した。トラックなどを生産するスカニア社は、は今年5月EUに新規加盟した中東欧諸国への生産ラインの移転と国内のレイオフを同時に計画している。昨年は主に製造業・IT通信分野などを中心に約4万人の雇用が削減された。

労働市場庁の取り組み

労働市場庁(AMS)では、2001年から今年までの3年間に合計8万人分の雇用が喪失したと推計している。またこのような雇用なき経済成長は、2005年度も継続するだろうという予測をたてており、このペースでいけば近い将来、顕在失業率(open unemployment)(注1)は6%に達するだろうと予想している。その上で、今後は失業者を民間のサービス産業等の成長分野へ再就職させていくための職業訓練や雇用助成金が必要になるとして、新たな予算の獲得や新規プログラムの立ち上げに取り組んでいる。

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