本年中の新規雇用創出を180万人と予測

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2004年8月

ルーラ大統領は選挙運動中に、任期4年間で1000万人の新雇用を作ると公約していたが、政権担当1年半経った現在では、公約達成見込みは次第に遠ざかっていると見られている。しかし、リカルド・ベルゾイニ労相は2004年だけで180万人の新規雇用を創出し、失業率は大きく下がると強調している。その理由として、政府が予想していた以上に経済活動の回復は強くなっており、さらに6月から見え始めた雇用増加、失業低下は政府予想を大きく上回る好結果を出していると発表した。

2004年1月1日にスタートした労働党政権は、政権担当1年目のGDPが0.2%、1人当たり所得は1.5%、家計消費は3.3%とそれぞれマイナスに終わっている。失業増加、就労者の収入低下が強まって、経済回復、雇用拡大期待は2005年以降でないと望めない予想が民間で持たれているために、2004年1月の全国市長選を標的とした選挙作戦も含めて、経済回復と雇用拡大予想を盛んに発表しているのが実態のようだ。アントニオ・パロッシ蔵相は、2004年にGDPは4%成長するという強気の予想を示した。

他方、労相によると2004年は1~5月だけで82万6000人の新規雇用が創出されたという。これは7月にならないと達成出来ないと見られていた数字。政府は2004年中の新規雇用創出を130万人と予測していたが、この結果に伴い180万人に情報修正したもの。野党は、労働党政権に入ってから失業は増加したと指摘しているが、これに対して労相は、「現在までの失業は前政権の政策によって生じたものである。前政権が残した失政の後始末を実施しながら、どのデータでも、2004年5月以降は失業率低下が証明されている」と反論している。

さらに労相は、現在出現している雇用について、パート、正規採用、高度技術者、低額所得者、高額所得者などあらゆる部門に多様な採用が見られており、「これは経済回復初期に見られる典型的な雇用出現である。現在は輸出が盛んなアグリビジネスに関連する業種が多い地方都市の雇用増加が主力ではある。この雇用が長期持続型の回復期に入ったかどうかを判断するにはまだ早すぎるが、国内経済が危機状態から脱出しつつあることは事実」と述べている。

これは、経済は2003年のマイナスから回復しつつあるが、持続的雇用増加には、長期に亘る生産投資が続き、現在の輸出好調を維持しながら、国内消費者の所得向上という条件が同時に、揃って推移する必要があるという考えに基づく。例えば輸出利益が国民所得へ移転されないような事態が発生すれば、雇用拡大維持は困難になるとの分析だ。法令で禁止されている正式労働契約のない雇用が、就労者の50%を超えていながら、政府はこれを取り締まることが出来ないことについて労相は、「非公式就労は90年代に増加したが、もう減少傾向にある。2003年は良好ではなかったが、それでも6大首都圏の正式雇用は64万人増加した。ただ毎年成長してくる労働力を全部吸収するには足りない。総合労働法を改正して、正式雇用に伴う複雑な手続きと、企業負担を軽減し、簡素化して、正規雇用の拡大を図りたい。2004年下半期から労働法改正案の国会審議開始を予定している。審議は非常な議論を呼ぶであろう。改正を実現できる可能性は、労組と使用者団体の出方次第だ」と予想している。

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