三菱自動車エンジン工場閉鎖に伴う影響

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2004年8月

三菱自動車は、南オーストラリア州ロンズデールにあるエンジン製造工場閉鎖を決定した。これにより670名が職を失うことになる。加えて、トンスレイ近郊にある自動車組立工場でも350名の人員削減が予定されている。後者は、人員の自然減と希望退職によって実施される。今回の決定は、先に東京で発表された同社の再編計画に伴うもの。大きな影響を与えるこの閉鎖であるが、実は南オーストラリア州の労働者や州・連邦政府はこの決定に一定の安堵感を示したという。というのも、三菱自動車が両工場を閉鎖する可能性が指摘されていたためである。両工場が閉鎖されれば3300人が失職し、他の関連工場への影響も必至と捉えられていた。

工場閉鎖の影響

総選挙を控えた連邦政府にとって、三菱自動車の操業継続に十分な方策を採らなかったという印象だけは与えたくなかったために、トンスレイ工場の存続はある程度の救いとなった。今後問題となるのは人員削減のやり方である。三菱自動車は、ロンズデール工場閉鎖を3段階に分けて行う計画である。まず「余剰人員」を削減し、そして17カ月かけて次第に生産を縮小、最終的に2005年10月から輸入エンジンへの全面的な切り替えを行う。人員削減の対象となるすべての労働者に解雇手当等が用意される。連邦政府はこれによる政治的ダメージを抑えようと、再訓練費用として1000万豪ドル(注1)、南オーストラリア州への新規投資誘致のために4000万豪ドルを提示した。

ただいくつか難題が残っている。まず連邦政府が雇用創出のための積極的な産業政策をどの程度実行できるのかが不透明であり、こうした政策が政府の干渉主義的な役割を制限しようとするWTO協定に違反するおそれがある。加えて、国民の中には、仮に三菱自動車が撤退することになれば、各種の産業保護策を通じて同社に与えられた財政支援分は返却されるべきであるという意見も見られるようになった。撤退条件如何によっては大きな議論を呼ぶ可能性もある。

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