EU新規加盟国の労働者受入制限案、議会が否決

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2004年7月

EUは5月1日、中東欧など10カ国が新規加盟して25カ国に拡大した。スウェーデン政府は当初、新規加盟国からの労働者の受入に一切制限を課さないとしていたが、外国人労働者の大量流入と国内労働市場の混乱を懸念する声が高まり、受入を制限する方向に政策転換した。しかし政府が提案した制限案は4月末に議会で否決され、受入政策をめぐる混乱が生じている。現在政府は、秋の国会に向けた新たな制限案提出の準備にとりかかっており、今後の行方が注目される。

受入政策転換の背景と制限案

2003年末までパーション首相は、新規加盟国からの労働者の受入に一切の制限を課さないことを宣言していた。しかし国内経済の停滞と失業率の高止まりが続く中、何の制限も課さずに安価な労働力が大量流入した場合の賃金低下や、外国人労働者による社会福祉サービスの不正利用増加を懸念する声が高まっていた。そのため政府は、急遽今年3月に政策の転換を行い、新規加盟国の労働者に対する受入制限案を議会に提出した。しかしこの案は4月28日に議会で激しい討議の末、182対137で否決された。

否決された制限案は、マルタ・キプロス以外の新規加盟8カ国(チェコ共和国、ラトヴィア、リトアニア、エストニア、ハンガリー、ポーランド、スロヴェニア、スロヴァキア)からの労働者を対象としている。彼らに対し、スウェーデンでの労働を希望する場合、事前に自国で労働許可証の申請・取得や、移住前にスウェーデンの居住先を確保することを求める内容となっている。

この政府の制限案に対して経営者団体は、反対を表明。労働組合は、産業により反応が異なっている。外国人労働者の大量流入による雇用喪失と労働賃金の低下を警戒する建設産業や運輸・交通関連の労働組合は、制限案に原則賛成を表明していた。

今後の政策

スウェーデン政府は今後、受入制限措置を実施した場合の労働市場への影響力を検討する調査委員会を設置し、2006年3月までに結果をまとめる予定である。さらに新規加盟国の労働者がスウェーデンで労働する際の、失業保険給付や生活保護などの社会福祉サービスの利用制限の可能性を検討する委員会も加えて設置し、2005年5月までに結果をまとめ、今後の政策に反映させる予定である。

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