臨時労働者の労働条件改善をめぐる動き

カテゴリー:非正規雇用労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2004年7月

臨時労働者やパートタイム労働者の処遇をめぐり、主要な研究機関が報告書を公表するとともに、ニューサウスウェールズ(NSW)州では労組が臨時労働者の処遇改善を求めて州労使関係委員会に申請を行うなど臨時労働者等の労働条件改善を求める動きが活発化している。

NSW州での処遇改善を求める動き

NSW州労使関係委員会は、5月5日に臨時労働者の処遇をめぐる審理を開始した。これは、NSW州労働評議会(NSW州における労組の頂上組織)の申請に基づいており、同評議会は臨時労働者の処遇について労使関係委員会による介入を求めている。具体的には、臨時労働者の多くが現在の働き方を自ら望んで選択しているわけでなく、銀行のローンも組めず、休暇もとれない現状を考慮し、1.臨時労働者に対し、6カ月以上継続的に就労した場合には、常用雇用の機会を提供する、2.派遣労働者に対し、派遣先企業の労働者と同じ賃金率を保障する、3.業務を外部化する企業には、既存の労働者に対し同一の賃金率で同一の請負業者での別の雇用を提供することを義務づける、という3つの要求が提起されている。

使用者側は予想通りこうした動きには反発しているが、最も注目されたのは州内最大の雇用主であるNSW州政府の動向であった。仮に労組の主張を認める決定が下されれば、それは州内の公共部門に適用され、最終的には州内の他のすべてのアワードにも間接的な影響を及ぼすと考えられている。ACTUも、同じような請求を連邦制度の下で提起しようと考えていることから、今回の申請を注意深く見守っている。

結局、NSW州政府は、臨時雇用の利用制限も正当化される場合があるとしながらも、今回の申請に反対する姿勢を示した。またアンドリュース連邦職場関係省長官も労組の主張を退ける見解を明らかにしている。

臨時雇用に関する報告書

Chifley Research Centreは、「Securing Quality Employment: Policy Options for Casual and Part Time Workers in Australia」と題する臨時雇用に関する報告書を公表した。同報告書は、オーストラリアにおける臨時雇用の増大、その背景と結果、そして解決策と提言を示すものである。

報告書は、まず臨時雇用の現状として臨時労働者の多くが相当程度長期にわたり同一の使用者の下で働いているにも関わらず、雇用が不安定で労働条件も低い点が指摘されている。臨時労働者の平均在職期間は2.6年であり、特に女性の割合が高くなっている。そのため報告書は、長期継続型の臨時雇用と本当の意味での臨時雇用を区別する必要があると指摘する。

また臨時労働者を保護する目的を持った現行制度も調査の対象とされ、これらについてある程度の成果は挙げているものの、十分とはいえないと結論づけられている。

その上で、報告書は数々の提言を行っている。まずそもそも改革は、すべての労働者に対する「ディーセントワーク」の保障を目的とすべきであって、したがって臨時雇用の質を引き上げることが必要であるとの見解が示されている。具体的には、雇用の保障、この問題に関する労使関係委員会の権限拡大、臨時雇用の定義の明確化、フルタイム労働への転換の権利を保障する、といった提言が示されている。加えて報告書は、連邦政府に対しパートタイム労働に関するILO第175号条約批准を勧めている。

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