総統選結果と中台関係

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2004年5月

台湾では中国大陸との関係を「両岸関係」と呼ぶ。両岸関係のうち政治交渉はここしばらく中断しているが、これとは正反対に経済的つながりは急速に拡大している。中台間の貿易額はそれをハッキリと示している。例えば2000年は305億米ドルだったが2003年は584億米ドル、その額は3年間に1,9倍にまで増大した。

台湾から中国大陸への投資額となると数字はさらに膨らんで700億米ドルに達する。それを裏打ちするかのように台湾から中国大陸への進出企業も6万社に増大した。2002年の日系進出企業数(現地法人数)は世界全体で1万9000社程度だからその数字の大きさが分かる。こうした台湾系企業の多くが揚子下流域の蘇州、昆山市に集中しており同地域は台湾企業の城下町とも呼ばれるという。

経済的つながりの拡大は人の移動も拡大させた。中国大陸にいる台湾人は少なくみても100万人、年間の旅行者数に至っては延べ400万人に達する。3月20日に終わった第3回総統選では、中国大陸在住台湾人の100万票をめぐって陳水扁・民進党候補と連戦・国民党候補が最後の最後まで激しい争いを展開してことは有名だ。

両岸関係は総統選でも大きな争点となった。台湾の新聞社が実施したアンケート調査では「新総統に解決を期待する経済問題」でも「新総統に影響を及ぼす経済問題」でも回答のトップは「中台関係」であった。

こうした回答の背景として陳政権への失望感が相当大きく横たわっているようにみえる。失業率の高まり、是正されない貧富の格差、不安定な経済運営などがその例だ。2000年の総統選で李登輝氏を破って颯爽と登場した陳政権だけに有権者の期待は大きかったが、就任以降の芳しくなく経済運営、そのことが国民の失望感を増幅させているのかもしれない。

総統選で連戦・陣営はこの点を鋭く指摘した。そして経済回復の決め手として「両岸関係」の拡充の必要性を説き、自分が当選したら「三通政策」(通信、通航、通商の直接的往来)を進めると公約を掲げた。具体的には中台間での海運、航空による貨物直航便の1年以内の実現、さらには旅客機直行便の2年以内の実現を指す。台北と上海間の日帰り出張を可能にするとしたこの政策、有権者とマスコミの関心を大々的に集めたことは容易に想像できる。

だが結果は独立派・陳水扁氏の再選に終わった。このことから今後の中台関係の冷え込みを懸念する声もある。例えば今年6月に台湾で開催が予定されている台北国際電脳展への参加を、中国は総統選後の3月末にキャンセルした。世界3大パソコン関連見本市のひとつといわれる同展覧会、近年は中国からの参加者による調達額の増加が注目されていたという。

参考

  1. nna.asia 2004/04/01, 3/10, 2/18, 2003/12/18, 12/9, 11/6配信情報

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