労働党首が交代―労働組合との緊張関係が高まる可能性も

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マーク・レイサム氏が、2003年12月に野党労働党党首に就任した。前任者であるサイモン・クリーン氏は国民に人気がなく、このままでは総選挙で勝つことができないとの判断の下に党首選が実施され、キム・ビーズリー候補とレイサム候補との間で繰り広げられた戦いは僅差で42歳のレイサム候補の勝利に終わった。

今回の結果は、ホーク=キーティング時代に別れを告げる世代交代ととらえられているが、新しい世代のリーダーとして最もやり手ではあるものの、実績が十分とはいえないレイサム氏に党首を任せることはある意味でリスクも伴うといえよう。

新党首就任の影響

レイサム新党首はけんか早く、過去には口汚い言葉を好んで使う傾向にあったが、現在ではそうした態度を改めている。

彼が古いスタイルの労働党党首と異なるのは、労働組合の役割に対する考え方である。ボブ・ホークに代表される以前の党首は、当然のことのように政策についてオーストラリア労働組合評議会(ACTU)と事前に協議してきた。つまり歴代の党首にとって、労組の存在は当然のことと受け止められてきた。

ところが新党首の場合には、その立場が明らかではない。彼は社会的責任や福祉からの脱却、流動性の高い社会を信条としている。亡命者の強制的な留置や同性婚といった問題には思いやりのある立場をとっているものの、それ以外の問題に対する彼の見解は政治的に見れば保守派と変わらない。そのため、労働党と労組との間の緊張関係が高まる可能性がある。

例えば、新党首は富裕層に対する減税を支持しているが、これはコベットACTU書記長の見解とは異なるものである。さらに、党首選の際には多くの労組幹部がビーズリー候補を支持した一方で、レイサム候補は労組との結びつきを持たなかった。このことは、労働党内部での勢力争いになんらかの影響を及ぼすものと考えられる。

現時点では、労組や労使関係に対する新党首の立場は明確になっていないが、新党首の就任は、労働党とACTUの困難な関係の到来を予示するものといえよう。

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