連邦性差別委員がセクシュアル・ハラスメント事件分析結果を報告

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2004年3月

ゴワード連邦性差別委員は、2003年11月に“A Bad Business: Review of sexual harassment in employment complaints 2002”と題する報告書を公表した。同報告書は、2002年に連邦人権・機会均等委員会が扱った職場におけるセクシュアル・ハラスメント事件(以下、「セクハラ事件」とする)を分析したものである。

報告書の内容

今回の報告書は、2002年に扱った152件のセクハラ事件の内容を分析し、その結果をまとめたものである。次では、その概要を挙げてみたい。

  • 152事件のうち86%は、男性が女性にセクハラを行ったとされるもので、原告の95%は女性であった。これに対し、被告の88%が男性、5%が女性、残りの7%は男性と女性両方が関係していた。
  • セクハラ行為の態様については、ほとんどの事件で口頭による嫌がらせや身体接触などの性的行動等様々な形のセクハラ行為が行われていた。また72%では、原告が採用されてから12カ月以内にセクハラ行為が行われている。加えて被告の60%は原告より地位が高い者であった。
  • セクハラ事件は、事業規模や職種などに関係なく起きている。
  • 原告の多くは、委員会に訴えを行った時点で職場を去っている。つまり、委員会に訴えを行った時点で職場に残っていた原告は7%にすぎず、67%は退職し、10%は休職中であった。原告が受け取った損害賠償額は500豪ドルから20万豪ドルにわたるが、その多くは加害者ではなく使用者により支払われている。

報告書発表に当たってゴワード性差別委員は、セクハラが女性労働者にとって大きな問題であり続けていること、さらに使用者にとってもコスト面で大きな損失をもたらしていることを強調した。つまり、企業はセクハラによって、セクハラ被害を受けた労働者の欠勤や退職、その求人・訓練費用の負担、職場のモラールダウンといった損害を受けているのである。

そのため、企業には内部の苦情処理システムを整備し、従業員を教育することが求められているのだが、セクハラに関するポリシーを持っていたのは被告企業のうち3社に1社にすぎなかった。

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