急増する不法移民
―外国人法施行規則を新たに制定
2004年3月の総選挙で成立した社会労働党政権は、外国人法施行規則を新たに制定すべく、政・労・使の交渉を続け、10月27日、合意に達した。その主な内容は、以下の通り。
- スペイン国内で住民登録を行ってから6カ月以上たっている外国人で、現在不法な形で雇用されている者は、雇用主が正式な雇用契約(6カ月以上)を結び、社会保障加入手続をとれば、合法化する。申請は外国人労働者本人でなく雇用主が行う。
- 農業季節労働者については、雇用契約期間は最低3カ月、建設及びホテル業では1年間に最低3カ月とする。家事労働者の場合は、1週間の労働時間が合計30時間以上であればよい。
- 上記は一時的措置であり、3カ月間の期間を設けて、この期間内のみで行う。
政府は、国会各会派に対して「外国人労働者の法的ステータスを、労働市場における当該労働者の状況と連結させるものである」と説明し、2005年1月の施行規則発効を目指して準備を進めている。この施行規則は、「雇用契約によって働いていることが証明できる者を合法移民と認めるものとして評価できると同時に、不法移民が多く働いている地下経済の浮上にも役立つものである」というのが、政府の主張だ。労組、雇用者団体の他、モロッコ人労働者協会(ATIME)や、その他移民を支援するNGO等は、概ねこれを評価している。
外国人労働者数の急激な増加とともに、「不法移民の増加」という新たな問題に直面することになったスペイン政府は、たびたび「特別合法化」という措置でこれに対応してきた。しかし、この措置は、外国人に対して「たとえ不法なかたちであっても、とにかくスペインに入国してしまえば、いつかは合法化される可能性がある」という期待を抱かせてしまい、不法に入国する外国人が増加するという危険性をはらんでいる。いわゆる「呼び寄せ効果」による悪循環だ。
今回の施行規則による一時措置も、不法移民であっても一定の条件を満たしていれば合法化する手続きがとれるという「特別な措置」であることにかわりはない。新たな「特別合法化」のようなものである。実際、全国紙のエル・パイス紙などは、「不法移民のためのガイド」なる記事に1面を割き、合法化を実現する手段として、外国人法に規定されている「定着による合法化」と、今回の「外国人法施行規則による一時措置」の2つの方法があると説明しているほどだ。
今後も外国人法改正の動きは続くと思われるが、「呼び寄せ効果」による悪循環をいかに断ち切るかということが、常に大きな課題となりそうだ。
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