ACTU全国大会の開催

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2004年1月

オーストラリア労働組合評議会(ACTU)の全国大会が、メルボルンで2003年8月18日から22日にかけて開催された。全国大会は3年ごとに開催され、今後の活動方針が決定される。組織率の低下や労働党との関係の見直しなど、ACTUを取り巻く環境は厳しくなっており、全国大会では様々な提案が行われた。

ACTUを取り巻く環境

ACTUをめぐる状況は年々厳しくなっている。まず第1に労働組合の組織率は1980年代初頭には45%近くあったのが、現在では23%、民間部門だけで見ると18%にまで落ち込んでいる。そのため、組織率低下を食い止めることがACTUの最大の課題となっている。第2に、労働組合にとって不利な政策を避けるためには労働党が政権を獲得することが望まれるが、近い将来労働党が政権に復帰する可能性は低いと指摘されている。というのは、労働党自体の評価は低くないものの、その党首であるサイモン・クリーン氏の人気が芳しくないのである。さらに第3として、ACTUと労働党との関係は様々な理由から緊張状態にある。例えば、労働党全国会議におけるACTU代表の議席数削減や貿易・経済政策、労使関係政策に関する方針の相違などが挙げられる。第4に、ACTUは労働組合間の縄張り争いに何らかの解決策を講じなければならなくなっている。組織率低迷とともに労組間の縄張り争いの増加が予想され、それがACTUの活動に暗い陰を落とす可能性もある。

今後の活動方針

ACTUは、職場も含めた社会的公正に関わる問題や労働時間、家庭生活と仕事の両立、税制等について幅広く運動を展開しながら、その活動の効果を高めようとしている。そのため伝統的な手法ばかりでなく、メディアを通じたコミュニティ・スタイルの活動方法がとられるようになっている。また欧州型の労働時間規制や労使協議会等も模索されている。

次に、全国大会において議論された活動方針の概略を紹介する。まず、ACTUは、全国大会初日に労使協議会の設立を奨励するという提案を行った。その正確な内容は不明だが、ACTUの説明では労使協議会はある種の従業員代表制であるという。執行部は、労使協議会が従業員代表の選択肢を提供し、それにより労働者が労組を望ましい代表として選択する道が開かれると考えている。この点については、使用者が労組代表を排除する手段にもなりかねないとの批判も示されたが、最終的にこの方針は採択された。

さらに、ACTUは、労働条件改善を含む生活向上を目的とした方針も示した。第1に、低所得者を対象に今後3年間に17%の賃金引き上げを求めていくことで合意した。第2に、臨時労働者の増加を抑制するために、臨時労働者が6カ月間継続勤務すれば常用雇用に転換できるようにテストケースを申請することで合意した。第3に、連邦政府が有給出産休暇制度を導入しない場合には、個別のケースごとにACTUが有給出産休暇の実行を求めていくこととした。第4に、労働時間の上限規制について、ACTUは時間外労働を含めて週48時間を法定上限としている欧州型の制度を提案した。上限規制にはニューサウスウェールズ州代表が反対していたが、今後相当の協議を行うことでACTUはその反対を克服した。

このように2003年の全国大会は、意欲的な内容を持って議論が進められたと評価できる。しかし、ACTUを取り巻く状況が厳しい中で、これらの政策をどの程度実行に移せるのか予測することは難しい。

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