新規雇用の4分の3が外国人に
2002年までの5年間に創出された新規の雇用機会の4件に3件は外国人労働者に提供されていることが、南洋工科大学(NTU)の調査で分かった。外国人労働者への依存を見直すだけでなく、シンガポール人が新規雇用に適合できるように政府は対策を講じるべきだと、調査を担当した経済学者は述べている。
調査によると、1997-2002年の5年間に創出された雇用は18万7000件で、うち4分の3が外国人の手に渡っている。これに対し、1992-1997年の5年間では25万件が創出され、うち5分の4が逆にシンガポール人の手に収まっている。調査は、人材開発省のホームページ上で公開されている統計データを利用した。
現在、シンガポールには外国人労働者が80万人いる。政府はこれまで、外国人労働者は、特に高度な技能を要する職種では、シンガポール経済の競争力を維持するのに不可欠であるとの立場をとってきた。政府はまた、外国人労働者を不況期の「緩衝装置」つまり雇用調整装置としても位置づけている(注1)。
調査を行ったNTUのリム・チョンヤー教授らは「政府のこの方針に異論はないものの、現在、外国人労働者によって大半が占められている職種には、シンガボール人が就いてもよいものもある」とし、その例として、会計士、若手弁護士、銀行員、電気技師、美容師、バス運転手などを挙げている。
また、外国人労働者が不況期に「緩衝装置」として機能することに関して、そのためには、外国人労働者の数は柔軟に調整されうるものでなければならないと同時に、シンガポール人が職をえり好みしないことが必要であるとしたうえで、現状が必ずしもそうなっていないことについて、政府に対策を講じるよう求めた。同教授らは、継続的な学習・訓練機会を提供する目的で最近設置された法定機関に職業斡旋の役割を付与することなどを提案している。
人材開発省が反論
NTUの調査結果について人材開発省は、全面的に誤りであるとして、独自の調査結果を示して反論している。それによると、1997-2002年の5年間に創出された雇用は10万2000件、うち10分の9がシンガポール人の手に収まっており、NTUの調査結果とは全く異なっている。1992-1997年の5年間についても、雇用創出は47万4800件でNTUの調査の2倍近くになっており、うち5分の3が外国人労働者の手に渡っているという。
同省はNTUのチョンヤー教授らに調査結果の訂正ないし撤回を求めているが、教授らは逆に、同省の調査結果は部外者が利用できないデータに基づくもので、第三者がその真偽を確認することは不可能だと再反論している。教授らはまた、自分たちの調査結果は同省自身がホームページ上で公開しているデータに基づいているのであるから、調査結果が現状を正確に反映していないとすれば、むしろ同省のほうが公表しているデータを訂正する義務を負っていると述べている。
注
- 外国人労働力の需給コントロール:シンガポールでは、外国人労働力の需給を、「依存率」と「賦課金」という2つの手段でコントロールしている。依存率とは、就労者数に占める外国人の割合を産業別に設定したものであり、賦課金(Levy)とは、いわば外国人労働者の採用に対する課税である。いずれも経済状況に応じて人材開発省が適宜変更している。現在の依存率と賦課金は次表のとおり。
部門 依存率 賦課金
(Sドル/月)製造 全就労者数の40%まで 熟練30 非熟練240 全就労者数の40%を超え50%まで 熟練30 非熟練310 建設 シンガポール人1人につき5人まで 熟練30 非熟練470 港湾・荷役・
造船現場シンガポール人1人につき3人まで 熟練30 非熟練295 サービス 全就労者数の30%まで 熟練30 非熟練240 家政婦 345
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