企業法施行後3年、民間企業による雇用創出に成果

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年8月

2000年1月施行の企業法がもたらした影響について、2003年5月に、経済管理中央研究所(CIEM)主催のセミナーと、計画投資省、国連開発計画(UNDP)共催のセミナーが相次いで開かれた。従来、法制度上、国有企業に比べ不利な立場にあった民間企業の発展を促すため、企業法は、営業権獲得のための行政上の手続簡略化、公務員の裁量の余地の縮小などを意図し、特に中小企業の起業増加に貢献している。

CIEMの調査によれば、企業法施行後、大幅に起業が促進された。過去3年間に、新規企業に約67億ドルの資本が投下されたが、これは外国からの直接投資額を上回っている。その内訳は、2002年に30億ドル、2001年に23億ドル、2000年に13億ドルである。1991年から1999年に新規法人登録した企業数は4万5000社であったのに対し、企業法施行後の2000年から2002年の3年間には5万5800社が新規法人登録している。資本金の平均額も増えており、2000年に9億6000万ドン、2002年に18億ドン、2003年1~3月には26億ドンにまで増加している。

現在、国有企業改革で国有企業部門が縮小傾向にある。国有企業数は、2005年までに5600から2000に減少する予定である。そのため、競争力を持つ民間企業が、新たな雇用の受け皿となることが期待されている。拡大傾向にある民間企業部門は、国有企業部門に比べ労働集約的であるため、投下資本金額が同じであれば、より多くの雇用を創出できる。具体的には、一人の雇用を創出するために必要な投下資本の平均は、民間企業部門では約4600ドル~6600ドル、国有企業部門では約1万4000ドル~1万8000ドルである。一般に政府の産業政策は、現在でも、石油など重化学産業偏重であると指摘されている。企業法施行後、特に労働集約的な輸出産業における起業が増え、雇用の安定とベトナムが比較優位を持つ産業の発展に貢献している。新規企業の7割は、食品加工、木工品、衣服、セラミックス、ガラスという、非常に限られた産業群に属している。

企業法の施行により、民間企業への投資が促進された。この投資が、地域の経済発展に貢献している。例えば、ホーチミン市では、国有企業あるいは政府による投資が、投資総額の36.5%を占めているのに対し、投資総額の38%を民間企業が行っている。

2000年以降に設立された民間企業は130万人から150万人の雇用を創出した。民間企業と自営業で雇用されている労働者総数は、現在、600万人を超え、労働力人口の16%を占めている。

残された課題

企業法の施行により、法人登録手続が簡略化されたが、さらに改善の余地がある。企業法の規定では、新規企業を法人登録するための日数が15日から10日に短縮された。しかし、法人登録するためには通常、45日間かかり、ベトナムの一人当り年間所得の84%にあたる520万ドンの費用も必要である。この費用は、他の諸国と比べ依然として高額である。さらに、地方政府の中には、独自の手続を追加したり、追加的な費用を課す場合がある。

企業法の運用にも問題がある。必要な文書が十分に出されておらず、事業に関係した必要書類や手続について書かれた文書が組織的に蓄積されていない。さらに、企業法と矛盾した規制がまだ有効になっている場合もある。最も困難な課題は、土地を事業目的に使う場合の使用権の獲得が困難な点にあり、その結果、特に新規投資や大規模投資が阻害されている。企業への国家の援助は、今でも不足しており、非効率であるばかりか、援助が平等に与えられているとは言えない。

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