地方自治体現業労働者の大規模スト終結

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年8月

争議の状況

地方自治体労働者労組(Kommunal)は、42万人の地方自治体労働者を対象とする3年協約の期間を1年繰り上げ、2003年4月1日に終了させた。同協約では3年目には3.5%の賃上げが見込まれていた。労働組合側は2003年に5.5%を要求している。交渉は協約終了の日まで続き、その後は調停者を交えて継続された。しかし、2つの調停案を両当事者がともに拒否した後、2003年4月23日からは対立が明白になった。

6つの市町村で児童ケアスタッフ9000人が4月23日から1週間のストライキに入り、3つの市では、清掃作業員、学校食堂労働者、女性メーター検針員、ゴミ処理管理者、公園作業員など、Kommunalに所属する全組合員によるストライキに突入した。さらに、県立病院6カ所でも労働者が仕事を停止した。争議の第2週目には(4月29日から5月5日まで)、3市、3大学病院で、Kommunalの組合員がストライキで職場を離れた。5月5日から12日までのストライキ第3波には、8市の病院、7市の児童ケアセンター、7市のKommunalの全組合員が参加した。(新たなストライキは、開始2週間前に警告を発して初めて可能になる。)

2003年4月26日に同労組は新たに60の市町村、ストックホルム、ウプサラおよび3県の児童ケア施設に対して、期日までに使用者が交渉に真剣に取り組む用意があるか、あるいは再び調停者を入れるかのいずれかでない限り、ストライキを行うと警告した。調停者は、交渉継続期間中はストライキの脅威を中断させる力をもつ。この第4波ストライキは6万人以上の労働者を動員し、この第4波で、使用者を交渉のテーブルにつかせるだけの強硬なストライキを打とうというのが、労組の戦略であったようだ。

労組は妥協案として次のような要求をした。それは、初任給を1万2000クローネから1万4000クローネに引き上げること、後期中等教育を修了した准看護師の賃金の引き上げを5.5%とすること、他のすべての労働者、すなわち、消防隊、公園用務、技術業務などの男性が多い職種の組合員については、終了した3ヵ年協約で全組合員に対して3年目に予定されていた3.5%の賃上げを行うことという内容である。

合意を取り付けるためのストライキの拡大

5月26日、Kommunalのストライキは、スウェーデン国内280の市町村のうち137に広がった。両当事者とも妥協する構えを全く示さず、4万7000人の労働者がストライキに参加した。調停者はすでに2003年に3.80%、2004年に2%とする2ヵ年協約の半ば公式の調停最終案を提示していた。

毎週様々な市町村に対してストライキを打つという戦術の結果、ストライキの第5週目が過ぎるまでには、大部分のKommunal組合員がストライキを経験していた。また一般国民も、ストという、民主的労使関係の実際的なレッスンを寛大に受け入れた。Kommunalの要求とストに対する一般国民の支持率は、82%と相変わらず高かった。他方、使用者たちもまたギャラップ世論調査を依頼した。インタビューの結果、91%が教育および保健・高齢者ケア分野の削減は望まないと答えたが、増税を受け入れる用意があるとした人はわずか10%にすぎなかった。使用者たちは、同労組の賃金要求を受け入れることは自動的にサービスの低下につながると主張した。

しかし、争議第6週目の初めに事態はさらに劇的な様相を呈し始めた。複数の労組が一般国民に大きな影響を与えかねないスト警告を発したのである。Kommunalは、6月4日に1万8000人のバス運転手が仕事を停止し、ブルーカラー労組(SEKO)、スウェーデン労働組合総同盟(LO)のサービス労働組合が地下鉄および鉄道交通の同情ストを指令する用意があると警告した。これらのストライキが同時に実施されれば、大都市の公共交通機関はマヒ状態に陥り、一般市民は抗議し始め、電気技師たちが予定する同情ストライキは、産業に損害を与え始めるであろう。中産階級を読者とする新聞各紙はストライキに対する非難を強めた。そして他のメディアも、一般市民のスト支持に関する報道に代えて、ストライキが及ぼす悪影響を集中的に取り上げ始めた。

国立経済研究所(Konjunkturinstitutet)は労働市場全体での平均賃金上昇を、今年は3.6%、来年は3%と見込んでいる。しかし、Kommunalのブルーカラー組合員が当然のこととして比較するホワイトカラーおよび専門職の地方自治体従業員は、1998年から2002年までの過去5年間にはるかに高い賃上げを獲得していた。すなわち、正看護師が年5.5%、医師が5.4%、教員が4.5%を得ていた一方、Kommunalの組合員が得た賃上げはわずか3.6%に過ぎなかった。

Kommunalが1年について要求した賃上げ率を、彼らの同僚たちは過去5年間、毎年確保していたのである。

このような状況において、かつ経済諸指標は下向いているという認識(昨秋、同労組が協約を終了した時点では予見できなかったことである)の下に、同労組は調停者を呼び戻し、最後の非公式調停案に基づいて交渉継続の意志を伝えた。5月27日に交渉が開始された。

地方自治体部門の新たな2ヵ年協約

5月28日、Kommunalの組合員10万人以上をそれぞれ1週間のストに巻き込んだ6週間にわたる波状ストライキの末、労使はついに合意に達した。Kommunalと2つの使用者連盟組織、すなわち市町村の使用者連盟である地方自治体連合と県評議会からなる県評議会連合との間で調印が行われた。

新しい協約は、3ヵ年協約の最終年に替わるものとして3.95%の賃上げを2ヵ年協約の1年目に、2.45%を2年目に規定している。一方、終了した協約は3年目にあたる2003年の賃上げとして3.5%を規定していた。

しかし平均賃上げは合意内容の一側面を語っているにすぎない。より重要なのは、Kommunal内部における賃上げの分配である。新協約は、主としてケア部門の女性の待遇改善を行う。就職1年目の最低賃金引き上げにより、初任給が1ヵ月1万2000クローネから1万3000クローネに、2年目は1万4000クローネに上がる。また経験を積んだ病院用務員や准看護師も2003年に5%の賃上げを受ける。

新協約の内容:2003年4月1日から2005年3月31日までの2年間2003年7月1日:医療、高齢者ケア、病院の部門の現業労働者の賃金を5%引き上げる。これは1ヵ月あたり800クローネの増額となる。その他の市町村従業員の賃金は最低2.6%引き上げる。最低上昇率よりも正確にどれだけ大きく引き上げるかは事業所ごとの交渉によって決定する。

2003年10月1日:19才以上の労働者の初任給を1万2000クローネから1万3000クローネに引き上げる。

2004年4月1日:児童ケアセンターおよびホーム・デイ・ケア(デイケアマザー)労働者、および精神ケアセンターの労働者の賃金を5%引き上げる(1カ月850クローネ)。

その他の地方自治体労働者の賃金を最低2.45%引き上げる。正確な引き上げ率は事業所ごとの交渉によって決定する。同時に、後期中等教育を修了した労働者の就職後1年の、協約に定める最低賃金を1万4000クローネに引き上げる。

調停者は2年間にわたる使用者のコスト増を6.4%と算出している。この協約には、旧協約の終了の日(4月1日)から新協約締結の日までの期間に対する遡及賃上げは含まれない。その代わりとして6月に1000クローネの一時金を、新協約の適用を受ける組合員全員に支払う。2003年4月におけるKommunalの組合員の平均賃金は1ヵ月1万6014クローネであった。2004年4月にはこれが1ヵ月1万7137クローネに上昇していると見込まれる。

ハンス・カールソン労働大臣は、女性が大多数をしめるケア部門の労働者の相対的賃金水準を改善することができたとして、この協約を歓迎した。

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