公共部門における労使関係の動向

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

韓国の記事一覧

  • 国別労働トピック:2003年8月

公共部門の労使関係においてまず注目されるのは、民主労総傘下の公共部門労組が公共部門労組連帯を結成し、労政交渉を求めていることである。公共部門労組連帯には公共運輸社会サービス労組連盟(公共連盟)、全教組、保健医療労組、公務員労組、大学教員労組などが加わっており、組合員数は約37万人余(民主労総所属全組合員の約6割)に上る。同労組連帯の主な要求は公共部門の予算拡充や公共部門労働者に対する労働3権の保障などである。今後、労政交渉のあり方もさることながら、産別体制(産別交渉)への移行や公務員労組の合法化などで同労組連帯が民主労総に代わってどこまでその団結力を誇示できるかが注目される。

もう一つは、ソウル都市鉄道公社(地下鉄5-8号線)労組、仁川地下鉄公社労組、大邱地下鉄公社労組などが6月4日、組合員投票を経て韓国労総から民主労総への上部団体の変更を決議したことである。今回民主労総に加盟した労組3ヵ所の組合員は7360人で、すでに民主労総傘下にあるソウル地下鉄公社(地下鉄1-4号線)労組、釜山地下鉄公社、韓国高速鉄道建設公団、全国鉄道労組などを合わせると、民主労総傘下の鉄道・地下鉄関連労組の組合員は4万1190人に上る。このような上部団体変更の動きは、民主労総が政府への強い影響力を盾に組織拡大競争で優勢に立ち、公共部門の構造改革においても最大の抵抗勢力になりうることを示唆している。

そのうち、全国鉄道労組はすでに4月20日のスト計画を前に政府の大幅な譲歩により、「民営化の撤回、1人乗務制の撤回、不足人員1500人の補充、財産仮差押・損害賠償訴訟の取り下げ、解雇された組合員45人の復職など」を勝ち取った。これにより、鉄道部門における政府の構造改革案は修正を余儀なくされた。その後、政府は6月に入って鉄道部門の公社化案などを盛り込んだ「鉄道構造改革法律修正案(国会で継続審議中)」の最終案を提示したが、鉄道労組はそれに反発し、「労組の要求が十分に反映されない場合、ストに突入するしかない」とさらに圧力をかけている。

そして、ソウル都市鉄道公社労組、大邱、釜山、仁川地下鉄公社労組は、大邱地下鉄での火災事故を機に安全運行への関心が高まっていることもあって、「1人乗務制の撤廃、安全要員の確保、外注化の撤廃、地下鉄安全対策など」を要求し、6月24日からストに突入することにしている。これに公共連盟も連帯闘争態勢で臨むことを明らかにしており、公共部門における労政対立の行方に目が離せないところである。

2003年8月 韓国の記事一覧

関連情報