労使関係委員会、アワード最低賃金引き上げを決定

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

オーストラリアの記事一覧

  • 国別労働トピック:2003年8月

オーストラリア労使関係委員会(AIRC)は2003年5月に、連邦アワードの適用を受ける労働者について最高で週17豪ドルの賃金引き上げを認める決定を下した。AIRCによる決定は「全国賃金ケース」と呼ばれ、政労使からのヒアリングの後にアワードの適用を受ける者を対象に賃上げを認めるものである。

決定の内容と評価

AIRCは、まず週あたり賃金が731豪ドル未満の者に対し週17豪ドル、そして週あたり賃金が731豪ドル以上の者に対し週15豪ドルの賃金引き上げを認めた。前者はおよそ150万人、後者はおよそ20万人に影響を及ぼすと思われている。これにより連邦最低賃金は週当たり448.40豪ドルとなる。

全国賃金ケースに対しては、相対的に高賃金であるアワード適用労働者に対しても賃上げを認める点で批判が展開されており、今回の決定はこうした批判を考慮したものとなっている。今回の週17豪ドルの最高引き上げ決定は、連邦政府やオーストラリア産業グループ(AIG)が主張していた12豪ドルよりは高く、オーストラリア労働組合評議会(ACTU)が求めていた24.60豪ドルよりは低いものとなった。

賃上げ幅については、エコノミストはオーストラリア経済に十分な余裕があると見ており、オーストラリア連銀が賃金インフレ防止のために金利を引き上げることはないと考えられている。

ACTUは、賃上げ幅がインフレのペースに追いついておらず低賃金労働者にとっては実質的に賃金引き下げとなると指摘し、慎重な態度をとった。特に連邦政府が提案している医療・教育制度改革が実現すると、最低賃金では生活できないとの懸念も広がっている。一方、使用者の中には、賃上げ幅が大きいために人員削減せざるを得ないとの見解を示すものも見られた。

2003年8月 オーストラリアの記事一覧

関連情報