金属産業部門における産別交渉の試み

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年7月

民主労総傘下の金属労組は4月22日に全国96ヵ所の事業所を対象に産別交渉を行うことで経営側と合意し、5月6日に初めて産別交渉に入った。金属労組は2001年2月に産別労組(支部108ヵ所、組合員3万795人)として結成され、2002年12月に事業所別労働協約とは別途に108ヵ所の事業所を対象に5項目の産別基本協約を結んだ。その後、同基本協約の履行のために「全国労使実務委員会」を設け、経営側代表との話し合いを続けてきた。2003年3月に経営側から「今年労働協約改訂交渉をひかえている事業所に限って中央レベルでの産別交渉を行うこと」が提案され、4月22日に96ヵ所の事業所代表が経営側交渉代表に交渉権および協約締結権を委任し、中央レベルで産別交渉を行うことで合意に達したのである。

いままで産別交渉に及び腰であった経営側が今回進んで産別交渉を提案した背景には、次のような要因が影響しているようである。まず金属労組はすでに事業所別労使交渉に介入し、強い交渉力を発揮しているため、経営側もそれに対抗できるような態勢で交渉に臨む必要に迫られている。第二に、中央レベルでの産別交渉と事業所別交渉の重複を避けることができれば、労使交渉のコストを節減できるし、他社の動向に注意を払う必要もなくなるとの判断が働いた。第三に、労使交渉の争点が賃上げや福利厚生などの事業所別決定事項にとどまらず、労働時間の短縮、非正規労働者の差別撤廃、筋骨格系疾病対策などのように産別レベルで決めるべき案件にまで広がっており、とりわけ後者の争点をめぐっては、事業所別交渉より産別交渉の方が効果的であるという認識もあるだろう。要するに、経営側がようやく産別交渉への移行を大勢と受け止め、争議の大型化や労使交渉の重複などのデメリットより、前述のメリットを引き出す道を模索し始めたとみることができよう。

金属労組は今回の産別交渉にあたって、次のような要求案を出すともに、産別交渉が決裂した場合、6月9日から13日にかけて事業所別に争議行為に対する組合員投票を行い、18日にゼネストに突入する計画も検討している。1.週休二日制の早期実施、2.非正規労働者に対する差別撤廃、3.筋骨格系疾病対策、4.労組活動の保障、5.基本協約有効期限の自動更新など。その他、賃金など残りの案件については地域別集団交渉で扱うことになっている。

ちなみに、労働部が4月9日に発表した2002年の労使紛争状況によると、322件のうち、産別労組によるのは179件(55.6%)で半数以上を占めている。そのうち金属労組によるのは79件で最も多い。金属労組が強い交渉力を誇示するために実力行使に出るケースが多いことの表れである。

今回の産別交渉が経営側の期待通り金属労組主導の労使紛争を減らし、労使交渉のコストを節減することにつながるのか、また金属労組の思惑通り80ヵ所に上る未加盟事業所労組に対して金属労組への加盟を促す追い風になるのか、その行方が注目されるところである。

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