欧州委員会、「新欧州雇用戦略」を提示

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

EUの記事一覧

  • 国別労働トピック:2003年7月

欧州委員会は2003年4月に新たな欧州雇用戦略案を提示した。今回の雇用戦略は、より多くより良い雇用を提供することを目的に、加盟国に対し10の優先事項を示し、さらに各国ごとに個別の勧告を行っている。雇用戦略案は理事会に提出され、欧州委員会によれば2003年6月には承認される予定であるという。

新雇用戦略案の内容

新雇用戦略案は、主に2003年雇用ガイドラインと勧告から成っている。
雇用ガイドラインに関しては、リスボン戦略を反映させた3つの包括目標(完全雇用、労働の質と生産性、結束と包括的な労働市場)を立て、その達成のために10の優先事項(「十戒」)を設定している。具体的には、1.失業者等に対する支援を強化し、長期失業を防止する、2.起業を奨励し、そのための環境を整える、3.労働者と企業双方の変化への適応性を高める、4.人的資源に対する投資を増やす、5.労働の供給量を増加させ、アクティブ・エイジングを促進する、6.雇用と賃金に関する男女平等を進める、7.不利な立場におかれているグループに対する差別を解消する、8.労働が割に合うように財政的刺激策を活用する、9.闇労働を減少させる、10.人の自由移動を促進する、が挙げられている。

さらに、EUレベルと加盟国レベルでの具体目標も提示されている。今回示された具体目標には、従前の雇用ガイドライン等に含まれていたものに加えて新たなものもある。たとえば、1.2010年までに長期失業者の3割を職業体験または職業訓練につかせる、2.実質的な労働市場退出年齢をEU平均で2010年までに60歳から65歳に引き上げる、3.加盟各国において2010年までに雇用における男女間格差を解消し、男女間賃金格差を半減させる、4.加盟各国において2010年までに、0歳から3歳までの児童の33%が、そして3歳から就学年齢までの児童の9割が保育施設を利用できるようにする、等が掲げられている。

加盟国に対する勧告では、上述した雇用ガイドライン実行に関する個別のガイダンスと各国ごとの緊急課題等が扱われている。各国で概ね共通して取り上げられているのは、アクティブ・エイジングや男女平等、生涯学習、労働供給、失業予防等である。

EU政策の相互補完性を高める必要から、今回欧州委員会は初めて雇用ガイドラインと勧告を包括経済政策指針と同時に提示した。

2003年7月 EUの記事一覧

関連情報