職場でのストレスが裁判での焦点に

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年7月

南オーストラリア州労災補償審判所は、職場でのストレスが従業員の末期ガンの一因となったとの主張を認める判断を示した。この判断が重要な先例となることは間違いなく、職場でのストレスと疾病に関わる訴訟が増加する可能性がある。

今回の事件では、従業員の未亡人が州の矯正サービス省(刑務所等を管轄)での労働によるストレスが夫のガン死の主要原因であると主張していた。亡くなった職員は21年間州刑務所で働き、組織再編の間に責任の重い職位から降格された。彼は降格を自分の努力や忠誠心に対する侮辱と捉え、亡くなる前の2カ月間ストレスを理由に休暇を取得していた。加えて、刑務所では囚人が職員を人質にとるといった騒ぎや拘置中の者が死亡するといった事件があり、同職員は大きなストレスを受けた。訴えを審理した審判所は、こうした状況が職員のガン死の一因となったと認め、未亡人に対し損害賠償としておよそ17万3000豪ドルの支払いを命じた。

またニューサウスウェールズ州最高裁判所も、職場でのストレスと疾病との因果関係を認める判決を下している。ストレスは、退屈な反復作業や職場でのいじめ、労働に対するコントロールの欠如等からも生じ、結果的に慢性疲労やうつ、不眠症、偏頭痛等を引き起こすといわれている。ある事件では、共同住宅の管理人に対しおよそ50万豪ドルの損害賠償の支払いが認められた。この管理人は、暴力的で他人を罵倒するような賃借人への対処や死亡した賃借人の部屋の片付け等からうつとストレス障害に陥り、仕事を辞めざるを得なかった。裁判所は、この管理人の精神的損害に対する使用者の法的責任を認めた。

こうした判決は安全な職場を提供するという使用者の責任を強調するものといえ、ストレスフリーな職場環境の整備が求められている。

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