コール王立委員会、建設業の労使関係改革を求める報告書を公表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年7月

コール王立委員会は2003年3月に建設業の労使関係に関する報告書を公表した。同報告書は、建設・林業・鉱山・エネルギー労組(CFMEU)の活動に大きな影響を与えるものと予想され、労組の反発は必至である。

報告書の内容

コール王立委員会による報告書は建設業改革のための青写真を提供するもので、直ちに連邦政府により承認されている。コール王立委員会は、建設業におけるいわゆる不正行為を明らかにし、それを解決するための方策を勧告するという目的のために2001年10月に設立された。王立委員会は、当初から建設業での不正行為の原因が労組にあるとの立場をとっていたことから、その目的はCFMEUの影響力削減にあるのではないかと批判されてきた。

報告書は、同産業がいわば無法状態にあり、その原因の多くが労組によるものであると示唆し、その上で同産業を監督する政府機関の設立を勧告している。

具体的には、不正行為とはたとえば贈収賄、労組幹部による脅迫等であり、これは労働条件の改善やクローズド・ショップを目的に行われているという。また時として労組幹部による要求は私腹を肥やすためになされており、建設業者は、多額の投資と納期のために労組との対立よりは金銭の支払いを選択しがちであること。結果的にそのつけは消費者に回されることになると指摘している。

報告書は労組の不正行為を詳細に指摘する一方で、使用者側の問題にはほとんど触れていない。しかし、建設業は労働安全衛生上大きな問題を抱えており、労働災害率が高く、さらに贈収賄には使用者自身が深く関与しているともいわれているが、報告書では十分に検討されていない。

報告書は、建設業を監督する機関としてオーストラリア建築建設委員会(ABCC)の設立を勧告している。委員会は州・連邦警察の職員や公訴局職員などで構成、強制捜査権を持つ。委員会設立の目的は、同産業でのパターン・バーゲニングやクローズド・ショップを阻止することにあり、委員会は関連法規を厳格に実行していくものと思われる。

さらに報告書は、連邦政府に対し「建築建設業改善法」の制定を勧告した。同法は、パターン・バーゲニング廃止を明確に掲げ、未登録の労使間協定を無効とする。加えて、交渉代表の選抜や争議行為の実施にあたっては労働者の秘密投票を義務づけ、違法な争議行為に対する規制を厳格化し、アワードで定めることができる条項の削減なども含んでいる。

報告書に対する反応

労組側は王立委員会の報告書がバランスを欠くとして強く批判している。オーストラリア労働組合評議会(ACTU)は、報告書が建設業だけでなく国内の労組全般に対する挑戦であるとの見解を示し、勧告で示された法案成立阻止に向けて活動を行う方針である。

これに対しアボット職場関係省長官は、報告書では職場の安全衛生や労働条件の確保等もカバーしているとして報告書に対する批判をかわしている。

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