労働裁判所判決の大部分で3者構成の判事が全員一致

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年6月

2002年には政労使で構成される労働裁判所で138件の判決が出た。使用者側が勝訴したのは60件、労働者側が勝訴したのは42件で、32件は調停により労使が和解した。他の4件の判決では、労使間に明確な勝敗がつかなかった。

労働裁判所には審理を進める職業裁判官が4人いる。通常、3人の判事が訴訟を担当し、そのうち1人は使用者側、もう1人は組合側が指名する。もっとも、大半の訴訟では3人の判事の判断が分かれることはなく、全員一致の判決が多い。2002年に2対1の多数決で裁定された訴訟は10件にすぎない。これは裁判官が、指名を受けた労組や使用者団体とは独立に法的判断を下していることによると考えられる。

大半の訴訟は労働組合か使用者団体が提訴した。組合の支持を得ていないか組合に加入していない労働者は多くの場合、地方裁判所に提訴する。そこでの判決は労働裁判所に上訴でき、労働裁判所が最終審となる。労働裁判所では、労働組合がつねに労働者を代表したわけではなく、そうした訴訟は78件にすぎなかった。54件については個人が弁護士を通じて労働裁判所に提訴した。たいていは勝てる理由や見込みがないと組合が判断したからで、こうした訴訟は予想通り労働者側が敗訴することが多い。6件は男女平等オンブズマンや類似の機関が労働者を代表した。

多くの職場では、労働協約が締結されている。その後、地方や中央の交渉で合意に至らなかった場合、労使のいずれか一方あるいは双方が労働協約の解釈を巡り裁判所に提訴する。ほとんどの訴訟では、当事者は裁判所での口頭陳述を準備している間に折り合いをつける。こうした初期段階での和解が増える傾向にある。これは双方が敗訴を恐れるため、あるいは訴訟費用の増大を回避したいからである。

労働裁判所に持ち込まれる訴訟の大部分は、解雇やレイオフの実施にあたり、雇用保障法をどのように適用すべきかという点についての争いである。こうした訴訟ではほとんどの場合、労働者側が不利な立場に置かれる。解雇あるいはレイオフを決断するのは一般に使用者であるからだ。従業員の職場委員(労組専従職員)の解雇やレイオフをめぐる訴訟も多い。使用者はそうした解雇やレイオフに対して納得のいく理由を示すことができなければ、損害賠償を支払うか、不当に解雇した職場委員を復職させなければならない。損害賠償は職場委員とその組合が受け取る。ごく最近の訴訟では、職場委員に最高額の賠償(8万クローネ)が支払われた。賠償総額は40万クローネにのぼり、訴訟費用に充てられたほか、職場委員と労組の間で分配された。

労働裁判所は、労働協約の解釈を判示することを目的として1929年に設置された。発足当初は毎年、何百件もの判決を示し、大量の判例が蓄積された。第二次世界大戦後、新労働法が制定される以前は労働裁判所への提訴は年数件しかなかった。ところが1970年代になり、政治、経済状況が大きく変化すると、戦前の判例が時代遅れとなっていった。また、それまでの労使関係は、労使間の合意を軸に動いていたが、1970年代には法律を制定することによって労使関係の新たな枠組みの構築が行われた。とりわけLOをはじめとする労組は、1970年代に率先して労働法の改正を要求し、1973年から1977年の間に、雇用保障法など労働関連法の多くが新たに成立した。現在、労働裁判所は判例に基づいて新たな法的基準を定めており、訴訟件数が大幅に増え、毎年約100件から300件を扱っている。雇用差別案件を提訴できるオンブズマンが設けられたことも訴訟が増えた要因の一つである。

最近、工業部門の労使は、確立された慣行が、判決によって望ましくない方向に改められることを恐れて提訴にきわめて消極的な姿勢を取り、労組支部の苦情を全国レベルの交渉で解決すべく多大な努力をしている。例えば、金属労働者組合など一部の組合は紛争をすべて交渉で解決しようとしており、2002年に労働裁判所に提訴した事件は1件しかなかった。地方自治体労働者労働組合(Kommunal)や小売業労働組合(Handels)などの慣行はそれとは違い、昨年はほとんどの事件を労働裁判所に提訴した。

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