雇用上の性差別の実態と男女間の賃金格差の是非をめぐる判決

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年6月

新政権が主要政策課題として雇用上の性差別撤廃とともに、女性労働力の活用を掲げていることもあって、雇用上の性差別に関心が高まっている。以下、その一端を紹介する。

まず、労働部が韓国女性開発院に委託して行った「男女雇用差別実態調査(未就業大卒者男女200人ずつと在職者男女300人ずつ)」によると、女性在職者の半数以上が募集・採用、職務配置、初任給などで性差別があると答えている。募集・採用で53.7%、職務配置で52%、初任給で50.3%、成果給およびインセンティブで46%、号俸等級で42.3%、昇進にかかる期間で32.3%、定年規定で15.3%などとなっている。

特に、女性在職者の場合、管理職に昇進する割合が極端に低いことも明らかになっている。女性部が韓国労働研究院に委託して行った実態調査(雇用保険データベース)によると、従業員30人以上の事業所において女性管理職の比率は4.9%(7600人)にとどまっている。企業特性別にみると、コスダック市場上場企業で13.4%、金融機関で8.3%、ベンチャー企業で7.2%などそれぞれ平均値を上回っているのに対して、上位30社の大手企業では4.4%、公企業では1.3%にとどまっている。そして月平均賃金(2001年末基準)でも女性管理職のそれは228万ウォンで男性の83.5%にとどまっている。

そして民主労総が「世界女性の日(3月8日)」を向かえて女性組合員942人を対象に労組が2003年の賃上げおよび労働協約改訂交渉で優先すべき案件について調査したところによると、「職場内保育施設の設置」(18.4%)、「性別賃金格差の解消」(17.7%)、「昇進における女性割り当て制の導入」(16.2%)などが挙げられている。

一方、最高裁で「男性労働者が女性より単にきつい仕事をするだけの理由で賃金に格差をつけるのは違法である」とする判決が下され、男女間の賃金格差を是正する試みとして注目されている。

最高裁は3月20日、「男女労働者の間に学歴・経歴・技術などでほとんど差がないのにもかかわらず、男性労働者の日給を女性より2000ウォン高く設定したとして、男女雇用平等法違反の疑いで起訴された」H社代表に対する上告審で一部無罪の判決を下した原審を破棄し、事件を水原地裁に送り返したことを明らかにした。最高裁判決の要旨は次のとおりである。すなわち、「会社が1996年に作成した就業規則に"性別・学歴・年齢・技術などに応じて賃金を決定する"という規定を盛り込むなど、性別を賃金決定の重要基準として用いたことは明らかである。そして男性労働者が女性に比べて多くの体力を使う労働に従事したのは事実であるが、男性労働者の作業が一般の生産職労働者に比べて特別に高い労働強度や技術を要するものであるとはいえないので、男女労働者間の賃金格差を正当化することはできない」というものである。

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