雇用・社会政策・保健消費者問題閣僚理事会の開催

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年6月

  雇用・社会政策・保健消費者問題閣僚理事会が、2003年3月にブリュッセルで開催された。議題は、欧州雇用戦略や男女平等、人の自由移動などであり、このうち労働者派遣に関わる指令案が注目を集めた。

理事会での議論

まず欧州雇用戦略関連では、2002年雇用報告書が承認された。同報告書は、EUの雇用状況と雇用ガイドライン等の実施状況の概要を示したものである。さらに欧州雇用タスクフォースの創設に関しても幅広い支持が得られた。タスクフォース設置の目的は、特に欧州雇用戦略の実現に対する障害等を明らかにする点にある。

次に社会保護については、年金と医療・高齢者介護に関する報告書が承認された。年金に関する報告書は、加盟各国が財政的に維持可能な年金制度構築に向けて努力している状況を報告し、また今後は高齢者雇用を促進するような制度設計が必要であるとしている。医療・高齢者介護に関する報告書は、すべての者に医療を保障し、介護の質を高め、財政的に維持可能な介護システムを構築するという目的の下での共通の課題に焦点を当てている。

また理事会は、「成長と雇用に関する社会サミット」設置に関する決定を採択した。サミットは、理事会議長国等と欧州委員会、ソーシャル・パートナーからなり、経済・社会・雇用問題への継続的取り組みを確保する目的を持っている。

労働者派遣については、派遣労働者の労働条件に関し指令が必要である点では幅広い支持があったが、規制の程度やソーシャル・パートナーの役割などをめぐって意見の違いがあり、結局最終的な合意に至るにはさらなる検討が求められるということとなった。今後検討すべき懸案の課題としては、次のような事項が示されている。

  • 指令案は、加盟国に対し派遣労働の制限または禁止を見直すよう求めているが、この点については再検討の要望が多く示された。
  • 派遣労働者に対する均等待遇原則適用をめぐっては、6週間以上の派遣が条件とされており、この条件や期間に関し意見が一致していない。
  • 長期失業対策として労働者派遣を利用する場合は、指令の適用除外を認めるという規定に関しては、その範囲の拡大を求める声も見られた。

議長は、次回の閣僚理事会までに指令案に関する政治的合意を得たいとの希望を表明した。

これ以外には、ジェンダー・メインストリーミングや障害者年等が議題に上った。

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