欧州委員会、男女の機会均等に関する年次報告書を公表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年6月

欧州委員会は、2003年3月に男女の機会均等に関する年次報告書を公表した。同報告書は、2002年にEUで男女の機会均等に関しどのような進展があったのかを検討している。報告書は、立法面での進展は見られたとしながらも、特に民間企業における意思決定への女性の参加が不十分であると分析している。

報告書の内容

報告書は5章から成り、まず1章ではEU拡大を受けて、新たな加盟候補国の男女平等政策やEUの関連施策等が検討されている。

2章は、男女平等枠組み戦略の進展状況で、ジェンダー・メインストリーミングと具体的な活動(立法と資金援助)という2つのアプローチが示されており、報告書はこのアプローチの成功を明らかにしている。しかし、欧州雇用戦略に示された雇用率の達成に関しては、男女間格差の解消が課題とされた。つまり、女性は男性よりも家族的責任を理由に仕事を辞めることが多く、その背景には男女間賃金格差も指摘できる。そのため女性の雇用率引き上げは容易ではなく、保育施設の拡充や休業制度の整備などが課題とされている。これ以外には欧州構造基金や貧困などの問題が分析されているが、中でも年金に関してはこれまでの制度が「一家の大黒柱」としての男性を念頭に設計されていることが理由となって、受給額に格差が生じているとしている。

3章では、立法や判例、その他の施策面での進展状況が報告されている。まず立法の部分では、1976年男女均等待遇指令の改正に触れている。そして、これによりEUレベルで初めてセクシュアル・ハラスメントの定義付けが行われ、性差別の一形態として禁止されたことを評価した。改正指令に沿った、加盟各国での法制化の取り組みも紹介されている。また仕事と家庭生活の調和に関しても、各国の法政策の内容が説明されている。

枠組み戦略を実現するために2001年から2005年にかけて男女平等行動計画が実行されており、その中では毎年の優先課題が設定されている。2001年は男女平等賃金、2002年は家庭と仕事の調和、2003年は意思決定への女性の参加となっており、欧州委員会はこうした分野での活動に資金を提供している。

4章は人権という表題の下で、人身売買やドメスティック・バイオレンス等に関する施策が取り扱われ、最後の5章は2003年の展望を示している。

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