雇用関係法改正、労組の権利拡大ならず

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

イギリスの記事一覧

  • 国別労働トピック:2003年6月

政府は3月、新たな雇用立法に向けた白書を発表した。1999年に導入された雇用関係法はこれまでのところ十分よく機能しているとの立場から、政府は小幅な改正にとどめたい意向だ。一方、同法の抜本的な改正を期待していた労働界からは政府を非難する声が挙がっている。

労組がとくに期待していたのは、組合承認に関する規則の緩和だ。イギリスでは、組合が使用者と交渉するには、使用者から正当な交渉相手として「承認」されなければならないが、1999年雇用関係法によって、「一定の条件」を満たした場合には、使用者が反対しても組合は交渉相手として承認されることになった。

今回労組が緩和を期待していたのがこの「一定の条件」である。現行では、組合が法的な組合承認を得るには、承認投票で過半数の賛成が必要なだけでなく、従業員の最低40%の支持が必要であるが、労組としては、少なくとも後者の条件を廃止したい意向であった。

しかしジョンソン雇用関係担当相によると、雇用関係法が成立して以降、この「二重の条件」が障害になって組合承認が成立しなかったケースは一件しかなく、労組の主張は説得力に欠けるとしている。また、現行では従業員21人未満の事業所には適用されない規則を廃止するよう労組は求めているが、政府の認識では、中小企業の従業員の多くは労組に未加入であり、必ずしも労組を支持しているわけではない。

これに対し労働組合会議(TUC)は、事業所の規模がどうであれ、従業員の過半数が労組を支持していれば労組によって従業員の利益が代表されることは基本的人権に属する事柄だと反発している。また、合法的なストライキに参加した労働者が解雇されないよう保護する規則が盛り込まれなかったことも、労組の反発を強めている要因となっている。現行では、ストライキ参加者の雇用が法的に保護されるのはストライキ開始8週間までとなっており、労組はこれを国連規約に反するものだとしている。

もっとも、労組にとって有利な提案がないわけではない。たとえば、組合承認に関して、郵便やインターネットを利用した投票を認める提案がなされており、実現すれば、使用者による投票「妨害」を阻止できるうえ、投票コストの節減にもつながる。また、不公正に解雇され労働者の職場復帰を怠った場合に使用者に課される補償額の上限が引き上げられる見通しだ。

2003年6月 イギリスの記事一覧

関連情報