港湾公社、800人削減

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年5月

シンガポール港湾公社(PSA)は2月17日、国内の従業員5750人のうち、約800人を解雇すると発表し、同24日、496人に解雇を通知した。PSAは政府系機関から民間企業への移行期にあり、民営化後の市場競争に備えて現在、港湾運営以外の非中核事業の売却を進めている。今回の人員削減はその一環である。

PSAは、1997年にシンガポール港湾庁が法人化してでき、現在は、政府系投資会社テマセク・ホールディングスが100%所有している。マレーシア・ジョホール州のタンジュンプル港を中心とした域内競争にさらされており、昨年7月からはコンテナ積み下ろし手数料を10%割戻し、空コンテナ取扱量を半額にする措置をとっている。これまで収益は赤字になっていないが、民営化後の競争激化に備えて、非中核事業を関連会社のヘイゼル・ツリー・ホールディングスに売却し、本業の港湾運営に集中する。

今回の非中核事業の売却に合わせて、総従業員5750人の13%にあたる800人を段階的に解雇する。うち496人は3月末までに解雇し、残り300人については、定年退職、転属、雇用契約終了などの形で整理する。

解雇の理由としてPSAのスティーブン・リー会長は、総コストに占める人件費の割合が、ライバル会社の場合30%であるのに対し、PSAは40%に及んでいることを指摘し、市場競争に耐えうるコスト構造を構築する必要があると述べている。

3月末までに解雇される496人の大半は、事務系、技術系、メンテナンス系、その他サポート業務従事者。PSAは退職パッケージについて労組とすでに合意しており、勤続3年以上の従業員は1年につき1カ月分の給与が退職金として支給される(最大で25年)。勤続3年未満の従業員については、1年につき半月分が支給される。

今回の動きについて当地識者の間では、民営化後の競争激化に備え、経営がまだ悪化していない段階で人員削減に踏み切ったのは評価できると、肯定的に受け止められているようだ。

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