斗山重工業で労使紛争終結

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

韓国の記事一覧

  • 国別労働トピック:2003年5月

斗山重工業で泥沼化していた労使紛争は新任労働長官の調停で3月12日にようやく終結を迎えた。2月24日に労働部が提示した調停案に対して、経営側はその受け入れを表明したが、労組側はそれを拒否し、民主労総主導の連帯闘争に突入する構えをみせるなど経営側への圧力を強めた。これに対して経営側は一時休業に踏み切る方針を固めた。これで同社の労使紛争は最悪の局面を迎えるかにみえたが、その直前に新任労働長官が自ら調停に乗り出したことで、急展開をみせた。すなわち、経営側が不当労働行為に対する補足調査に続いて労働長官の直接介入に少なからぬ負担を感じたのか、労組側の要求を概ね受け入れる形で、労使間の合意が成立し、2カ月以上に及んだ労使紛争は幕を下ろしたのである。労使合意案の主な内容は次の通りである。

第一に、最大の争点であった解雇者の復職および懲戒処分解除をめぐっては、2月24日付の労働部の調停案には「労働委員会および裁判所の決定に従う」ことが盛り込まれていたが、今回の労使合意案では「とりあえず5人を復職させ、残りについては今後話し合う」こととなった。

第二に、労働部の調停案では触れなかった組合員個人に対する損害賠償・財産仮差押と今回のストの責任をめぐっては、それぞれ「焼身自殺した組合員の葬式が終わってから7日以内に取り下げる」ことと、「刑事・民事上の責任は問わない」ことが盛り込まれた。

その他の争点については労働部の調停案がそのまま受け入れられた。

今回の結果をめぐって、まず新たに調停にあたった新任労働長官は「労使間の不信の壁が本当に高いことを痛感した。今回の事態を機により成熟した労使関係を築くことを願う」と述べた。

そして今回の労使交渉で主役を演じ、連帯闘争の構えをみせた民主労総は「今回のケースはストに伴う損害賠償・財産仮差押問題の解決と産別労使交渉の先例となった。他の事業所での損害賠償・財産仮差押問題解決と労働3権にかかわる損害賠償・財産仮差押禁止のための法改正などに取り組むとともに、国会が呼びかけている週休二日制のための法改正案の話し合いにも積極的に参加するなど、対話と闘争を平行して展開する」方針を明らかにした。

これに対して、韓国経総は「今回のケースは企業内部の問題に外部の労働団体が介入しすぎて労使紛争の長期化や暴力化を招いてしまうという悪い先例となった。労使紛争の長期化で会社は莫大な損失を被ったのに、誰もその責任をとらない状況である。経営側が解雇者の復職や不法行為に対する損害賠償請求・財産仮差押の取り下げなどに合意したことが、今年の賃上げおよび労働協約改定交渉で悪い先例になるのが懸念される」と指摘した。

今回のケースでは、労組側が連帯闘争を軸に瀬戸際戦術をとったこと、政府が特別なケース(新政権の利害調整能力が初めて問われるケース)として直接介入し、労使間の合意を見出したこと、経営側が大幅に譲歩する線で労使紛争が解決されたことなど、以前とはあまり変わらないパターン化された行動が目立った。

2003年5月 韓国の記事一覧

関連情報