欧州委員会、労働者の自由移動に関するコミュニケを提示

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年4月

欧州委員会は、2002年12月にEU域内における労働者の自由移動に関するコミュニケを提示した。コミュニケは、移民労働者とその家族の自由な移動を妨げている問題を検討し、欧州司法裁判所の判例などを参考に欧州委員会がこの問題をどのように扱うかを明らかにしている。

人(労働者)の自由移動は欧州共同体法により保障された基本的な権利であるにも関わらず、現実には様々な障害により完全な自由移動が実現されているわけではない。また欧州労働市場をより柔軟で効率的なものにするためにも、自由移動の保障は重要性を増している。そこで、欧州委員会は今回のコミュニケを示すことで、加盟国等の注意を喚起しようとしている。

コミュニケの内容

コミュニケは主に4つの部門からなり、まず第1に移民労働者とその家族が直面している問題が全般的に扱われている。問題として指摘されているのは、居住許可の取得、雇用における均等待遇(労働条件だけでなく言語や職業資格、企業年金)、税金、家族の定義と子供の教育などである。

そして第2に社会保障、第3に就労場所と居住場所の国籍が異なる労働者、第4に公共部門における雇用をめぐる問題が検討されている。  社会保障については、人の自由移動を妨げている最大の要因であるとの認識の下に、現行法上の規制を詳細に説明している。同時に医療や保険料をどこで支払うのかといった問題についても言及している。  

就労場所と居住場所の国籍が異なる労働者については、原則として就労場所が属する国において移民労働者に認められているのと同様の給付を受けられるが、失業手当は居住場所が属する国家から支給される。この種の労働者とその家族については、これ以外にも医療や社会保障をめぐって複雑な問題が発生している。

公共部門の雇用に関しては、公共部門の就労機会、労働条件決定に際し他の加盟国における先任権等の考慮、他の加盟国における職業資格や学位の認定について法規制や判例が解説されている。 人の自由移動に関する現行法上の規制や判例は非常に技術的で複雑であることから、欧州委員会は今回のコミュニケを示すことでそれを明確かつ理解しやすいものにしようとしている。

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