年金制度改革を労働党政権が提案

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年4月

労働党政権は就任後、1週間も経たない内に、年金部門の改革案を提案し民間部門からの期待が示される一方で公務員や軍部からは猛反対が起こり、この改革案の前途多難を予想させている。

社会保障制度の年金財政問題に付いて、国内最大の発行部数を有する総合雑誌VEJA誌は、政府のデータを分析して、年金制度を国家財政の重大問題と指摘した。それによると、年金制度は1995年に現地通貨で190億レアルの赤字であったものが、02年は00億レアル、03年は800億レアルまで赤字が予想している。

国会で審議中の03年度国家予算は総支出額が318億レアルで、VEJA誌の分析なら、年金制度の赤字だけで4分の1に達する。現状を改革できないなら、04年には税収の全部が年金と公務員の給料支払いに充当するようになり、政府は完全に機能しなくなる。しかも民間部門の年金受給者には平均して月額340レアルであるが、政府(州、市の公務員を含めて)の公務員年金は2200レアル、立法府の年金は000レアル、司法部門の平均は300レアル、公務員は退職月の給料を年金として終身受け取る規定であるため退職数カ月前から給料を特別に引上げるため、によって現役公務員の給料より、年金生活者の自給額が高くなっている。

これに対して、民間部門の給料生活者は、社会保障納付金に関係なく、政府が定める参考指数で支給最高限度を設けている。03年の最高額は1562レアル。この額を受け取っている年金生活者は1%に過ぎない。従って、民間部門の退職者は年金では生活できず、新たな収入減を探すしかない。政府の財政を心配している労働党政権のリカルド・ベルゾイニ社会保障相は、公務員も、民間の社会保障制度と同等にし、公務員の年金上限も民間並に1562レアルに統一すると提案したところ、連邦最高裁判所長官が先頭にたって「これは既得権の侵害であり、革命を起こさない限り、社会保障制度の改革は出来ない」と発表して、政府の改革案を司法が阻止する意向を表明した。

公務員は社会保障制度改革案がでるたびに「既得権の侵害」を主張するために、最近は既得権を打倒したからこそ、ブラジルは歴史に残る奴隷解放を実現できたと反論が出ている。奴隷制度時代には、白人は黒人奴隷を購入して使う権利が、白人が作った憲法によって保証されていたために、彼等は既得権として享受してきた。これを皇帝が廃止したとき、白人は既得権の侵害として抵抗したが、この改革を実施したことによって、ブラジルは国際社会の仲間入りができ、一大改革を達成した。公務員はこの歴史に学んでいないと世論は非難している。

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